2016年09月29日

3035話 用心棒


 浪人者の集団がある。傭兵、私兵のようなものだが、所謂用心棒だ。普段は雇い主やその屋敷の警護、警備だが、ときには襲撃部隊にもなる。
 その雇い主は町の親分で、この用心棒のおかげで、縄張りはしっかりと守られている。ただ、他の縄張りを取りに行くようなことはしない。周囲の親分衆を敵に回すと孤立するからだ。
 そのため、別の仕事をしている。私兵を雇っているのも、実はそれが目的だろう。
 とある旗本の姫を誘拐するという仕事が来た。用心棒達は集団で、その籠を襲うが、助けに入った着流しの武士が強く、歯が立たない。そんな武士が急に現れるとは思ってもいなかったのだ。先ず一人が手傷を負った。籠を襲撃するだけの心づもりだったので、約束が違う。それで数人掛かりでも手に負えないので「引けい」となる。
 そういうことが度重なり、この私兵達は引き衆と呼ばれるようになった。雇い主の親分は不満だが、浪人達からは信頼が厚かった。つまり良い部隊長なのだ。それはすぐに引く命令を出してくれるため。怪我が少ない。
 この親分の屋敷が襲撃されたとき、引き衆は真っ先に逃げた。その逃げ口で少しやり合った程度。中に敵を入れないように防戦したのではなく、自分たちが逃げるためだ。
 親分も何とか逃げ切ったが、当然解雇。役に立たない用心棒のため、見切りを付けた。
 その後、引き衆達は独立し、用心棒派遣組織を作った。そして相変わらず悪人の手下になり、荒仕事に加わったが、危なくなればすぐに「引けい」の号令がかかる。引き衆の癖は直らないようだ。
 
   了


posted by 川崎ゆきお at 10:06| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする