2016年10月17日

3053話 永代供養村


 その村には村長が多い。実際には一人だが、村長代理、村長代行。これで三人。副村長が三人。村長代行代理が二人おり、その人数に加え、村長心得とかがそれぞれ付く。心得とは何か。これは役はないが、身分は同じと見なすこと。しかし小さな村なので、一般村民とのバランスが悪い。
 村長代行や代理までが偉いさんで、その下にさらに役職がある。ただ、本当に役場を動かしているのは、それらの人達ではない。所謂事務方、助役。村長以下は選挙で選ばれるが、村役場に勤めている人は、ずっといる。しかし、村長はずっと同じ家柄の人が選ばれているため、選挙で別の家系の人が選ばれることは先ずない。当然助役も、その一族だ。
 この村長一族、村を食い物にしているのだが、それほど食べるところがない。もう殆ど食べてしまったのだが、この一族は中央に顔が聞き、補助金などをかなりもらっている。また、辺鄙な場所にあるのに、公立の施設などが建っている。
 そのため、こんな小さな村など、赤字になるはずなのだが、合併もしないでやっていける。もし選挙で別の人を村長にすれば、村は壊滅する。
 歴代の村長は政治家ではない。中央官僚の何処かと繋がっているのだが、そのカラクリや繋がりはよく分からない。また、その村長一族は何等かの団体に加わっていたり、作ったりもしていない。長閑な村で優雅に暮らしている。たまに四畳半ほどの外車が入ってくることがあるし、村長代行代理がたまに上京している。それ以外目立った動きはない。
 中央と何世代にもわたって繋がりを持っている。中央の人事も変わるはずなので、余程の繋がりがあるのだろう。
 その起こりは明治維新あたりから始まっている。この一族はこの村のただの百姓で、維新時、有力者ではない。だから維新前に活躍した人がいたのだろう。表ではなく、裏で。
 ある省庁の事務方トップが変わるとき、申し送りというのが裏である。これは秘中の秘だ。その中に、この村に関しての記載があるらしい。これは余程のことなのだ。中央官庁が小さな村のことについて触れるのは有り得ない。
 何等かの秘密結社のような組織があるのではないかと思われるのだが、そのタイプではないようだ。
 村ではなく、村長一族を永代供養でもするように面倒を見ているのだ。また、疎かにできないような理由があるのだろう。
 
   了

 
posted by 川崎ゆきお at 10:26| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする