2016年10月20日

3056話 狼狽


「人にはウロウロしているタイプと、じっとしているタイプがあるのですよ」
「何かの印象ですか」
「休日のつぶし方などを見ていると、そう思います」
「余暇時間の過ごし方ですね」
「そうです。じっとしている人は、家にいることが多く、ウロウロしている人は、当然家の中でもウロウロしますが、多くは外に出ています。まあ、外出、お出掛けが多い」
「はい」
「しかし」
「はい」
「ウロウロしている人の方が実は少ない。家の中や建物の中にいる人の方が多い。もし半数以上の人が外に出ているとなると、ものすごい数になり、街や道は人でごった返すでしょう」
「そうなんですか」
「大きな災害があったとき、外に出ることがあります。避難のようなものです。これだけの人が何処にいたのかと思うほど、家から沸いて出ます」
「人口密度の高い町ですね」
「まあ、そうなんですが」
「それで」
「行楽日和、外に出ます。人が多い。これを人出が多いと言いますね。出ている人が多いという意味です。だから出ていない人も結構いるわけですが、実はそんな日でも、家にいる人の方が実際には多いような気がします」
「それで、その二つのタイプなのですが」
「はい、ウロウロする人と、じっとしている人ですね」
「遊牧民と定着民の違いでしょうか」
「難しいことは分かりませんが、気性のようなものもあるのでしょうねえ」
「気性」
「見て回るのが好きなんでしょう」
「それは何でしょう」
「好奇心かもしれませんし、ただの体質かもしれません」
「はい」
「毎日が日曜のような暇な人はかえって何処にも出掛けなかったりします。その気になればいつでも行けるからです。朝、一寸決心すれば出掛けられます」
「はい」
「今日、出掛けなければ次に出掛けられるのは二週間後だとなると、出るでしょ」
「はい」
「それでも出掛けない人もいます。じっとしているタイプです」
「それは外ではなく、内が充実しているからですか」
「いや、外に出るのが嫌なのですよ。用事があれば別ですがね」
「ウロウロしている人の方が元気そうですが」
「家にいるときに比べ、色々と身構えますからね」
「どちらの方が良いのでしょう」
「そりゃ、ウロウロしている人の方がチャンスがありますが、リスクもあります」
「狩人のようなものですね」
「ただ」
「何ですか」
「ただただ、やたらとウロウロウロウロと、うろついている人もいます。まあ、ウロウロとはうろたえるようなものですからね。単に迷っているだけ、何も判断が付かず、狼狽してているだけ。しかし、実際にウロウロしている人は、うろたえているわけではありません。目的があってしっかりと動いていますから」
「狼狽って、狼が関係しますか」
「さあ、狼に出合って、うろたえているような状態でしょうか」
「じゃ、ウロウロしている人は、逆に狩人には向いていませんねえ」
「本来じっといているタイプの人の方が、うろつくようです」

   了

posted by 川崎ゆきお at 10:58| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする