2016年11月03日

3070話 霊気の走る突端


 川と川とが交差するところは船の先端のように見える。その尖っているところに人がいる。先端は地図で見ると針のように尖っており、刺さりそうだが、実際にはコンクリートで丸く縁取られている。その先端部の美味しいところは河川の一部になっているためか、私有地ではないため、一寸した公園になっている。そこは川岸と遮断され、柵が張られているが、乗り越えれば、川岸まで降りられる。人がいるのはそこだ。
 土手伝いに、そこまで自転車で来た川西は、二つの川が合流するところにやっと訪ねることができた。大した用事ではない。しかし二つの川が海の近くで合流し、さらにもう一つの川とも合流することを知っている。だから、まだ、この先でも合流するのだが、それは後日の楽しみとして取ってある。とりあえずは、この先端を見たかったのだ。
 その川は元々一つの川で、途中で二つに分かれた。所謂暴れ川で、上流は同じ。昔は三つにも四つにも分かれ、別れた川もまた氾濫で子を産むように別れたのだろう。だから、この辺りは湿地地帯に近い。今は二つの川として流れているのがその名残。だから、二つの川の間は中州で島のようなもの。それがかなり広いため、島とは思えないが、多少は不便なところがある。橋がないと渡れないためだ。複数の幹線道路には橋が架かっているのだが、それでも川の土手で行き止まりになる小径が多い、抜けられないというより突き当たりだ。
 川西は上流側の先端は何度か踏んでいる。しかし下流は始めてだった。このネタを使うと、散歩ネタが一つ減るので、取っておいた。
 さて、先端部の人。公園の柵を乗り越え、川岸に降りている人だが、緩い傾斜のため、それほど危険ではないのだろう。また川もそれほど深くはないが、流れはある。
 川西は恐る恐る降りてみると、髪の長い女性で、黒いワンピースの下に黒いスラックス。光り物の首輪やネックレス。
「危なくありませんか」
「大丈夫であります」
 遠くからだと若いと思っていたが、喋り出すとものすごいシワができ、年が分かる。
「ここが先端ですねえ」
「そうです。集まります」
 来たな、と川西は心得た。
「霊の通り道ですか」
「違います。龍道です」
「龍道?」
「王道です」
「例の王道ですか」
「国王、帝王、君主かもしれません。そういう気が流れている場所です」
「はあ」
「それに当たっているのですか」
「そうです。浴びています」
「じゃ、女王にでもなるおつもりで」
「浴びるだけです。王道を極めるためです」
「王様への道ですか」
「君主の気風が身につきます」
 この人は魔道でも極めるつもりかと川西は思った。
 そこへまた、ややこしい人が降りてきた。袴をスカートのように履いている。
 来たな、と川西はまた思った。
 さらに真っ白な髭を胸まで垂らした人や、妙な魔法使いのような大きな帽子をかぶり、眼帯を付けた人や、ややこしい人が次々と降りてきた。
 ここは霊的なものが集まる場所ではなく、そういうややこしい人々が集まるところだったのだ。
 
   了


posted by 川崎ゆきお at 11:21| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする