2016年11月05日

3072話 誰も渡らない陸橋


 国道が交差する幹線道路をまたぐために高架になる。そのまま渡らないで左折する車もあるので、ただでさえ車線の多い国道が、さらに幅の広いものになる。もし車が一台も通っていなければ野球やサッカーができるほど。
 その高架手前に非常に長い歩行者用の陸橋がある。交差点まで出ると二段式の信号だが、そちらへ出た方が渡りやすい。陸橋から近いところに地下歩道がある。陸橋から交差点までの距離と似たようなものだが、方角が違う。
 地元の人は信号の切れ目で、その広い国道をサッと渡ったりする。それが危険なので地下歩道や陸橋を付けたのだが、陸橋を渡る人は殆どいない。
 長すぎることと、揺れたりするし、空気も悪い。それだけの理由ではなく、階段の上り下りが大変だ。地下歩道は自転車でも通れるが、その陸橋は古いためか、そんな仕掛けはない。
 それで、ますます渡る人がいなくなる。それ以前にそこを渡る用事のある人が少ないのだ。
 さらに老朽化しており、車が通ると振動が強い。それに下からの音も不気味だ。
 当然そういうところには都市伝説が付きものだが、何か異変が起こったので都市伝説となったのではなく、この陸橋の雰囲気だけで、都市伝説ができる。つまり、こんな陸橋なら怪しい話があるだろうと。
 同じ陸橋に複数の都市伝説ができている。いずれもその種のことが好きな人が作ったものだが、どれもヒットしなかった。だから、都市伝説の卵で、伝説化しないまま終わっている。
 そして物好きがその陸橋を渡る。陸橋を渡るのが好きなのではなく、都市伝説を作るために、体験のために渡るのだ。
 だから、この陸橋は都市伝説作者しか渡らなくなったようなものだ。
 この陸橋で亡くなった人はいない。交通事故も起こっていない。しかし、もっと古い時代なら、かなりの人が亡くなっている。一寸した戦闘があった場所で、南北朝時代だ。普通の戦ではなく、暗殺に近いものだった。しかし、都市伝説のネタとしては古すぎる。
 雨の日、傘を差した小学生が陸橋の横を渡っているのなら、今風だ。横といっても道路ではない。陸橋と同じ高さの空中を歩いている。しかし、見た目は綱渡りのように見える。
 また消える陸橋の話もある。実際に渡っている人がいるのだが、そのとき陸橋だけが消えるので、宙を歩いているように見えるとか。
 そんな都市伝説がいくつも作られたのだが、どれも定着しなかったようだ。
 しかし、陸橋そのものが消えたり現れたりする、まるで虹のような陸橋だと、少しはヒットするかもしれない。
 
   了


posted by 川崎ゆきお at 11:04| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする