2016年11月19日

3085話 ホッチキス


 高岡はホッチキスが必要だと分かっていたので、買いに行った。プリントアウトしたものを綴じるためだ。当たり前の普通の使い方。そのホッチキスがないというのだから普段から書類や資料などを綴じる機会がなかったのだろう。
 百均へ行くと百円である。色々な大きさがあり、どのサイズでも百円なので、一番大きなLサイズにする。そんなに分厚いものを綴じるわけではないし、針も普通のタイプ。その針もいるだろうとホッチキスの下にぶら下がっていた小さな箱を買う。プラスチックだがホルダーまで付いている。確かにホッチキスの弾だが、そんなに持ち歩くようなものではない。ホッチキスで撃ち合うのなら別だが。
 そして早速書類を綴じようとしたが、買ったホッチキスには針が入っていない。こういうのは昔から入っていなかったのかもしれない。シャープペンシルなら芯ぐらい最初から入っているのだが、ホッチキスの場合、そうはいかないのかもしれない。それですぐに先ほどのキーホルダー付きの容器を開けようとしたが、開かない。開け口のようなものが見えているが、こじ開けられない。そして何処をどう触っても手掛かりがない。包み箱に使い方が載っているので、それを見ると、針抜きだった。ホッチキスの針を抜く携帯針抜きだったのだ。そんなものホッチキスの後ろ側に付いているはずだが、百均の商品なので、それは省略していたのかもしれない。しかし、針がなければ綴じられない。最初から弾切れだ。
 高岡がホッチキスを最後に使ったのはいつ頃だろうか。十年以上前かもしれない。それで、昔使っていた小さな机があり、その引き出しを開けた。そこはもう使わなくなったものが色々と入っている。いらない物は捨てればいいのだが、そのまま放置していたが、それが幸いした。金属製の昔のホッチキスが出てきた。流石にこれは捨てなかったのだろう。
 そのため、ホッチキスを買いに行く必要はなかったのだ。錆びていないし、十分使える。そして問題は針。
 その針箱は消しゴムほどの大きさなので、これは探すのが難しいと思ったが、奥の方に紙の小さな箱が出てきた。これも買った覚えがある。その箱の大きさが先ほどの針抜きと同じような大きさ。だから針だと思って買ったのかもしれない。
 針箱にはまだ十分弾は残っていた。殆ど使っていなかったようなものだ。
 高岡は古いホッチキスはそのまま仕舞い、新しいホッチキスに針を入れ、そして書類を綴じた。
 
   了

 
posted by 川崎ゆきお at 10:31| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする