2016年12月20日

3116話 別世界


 旧街道を通っていると、いつの間にか、その時代に入り込んでしまった……というようなことを思う人は何人ぐらいいるだろうか。それ以前にその道が旧街道で、昔は遠くと遠くを結ぶ、幹線道路だったことを知らない場合もある。鉄道も飛行機もなかった時代、船以外ではここを移動するしかない。そのため、多くの人たちがその道を歩いていたはず。大名行列もあったはずだし、地方官が任地へ赴いたり、また戦闘のため、鎧武者の一団が移動したかもしれない。
 そういう思いがなければ、ただの道。少し狭いだけの道で、何も起こらない。
 ではそれを知っていると起こるのかというと、そんなことはありえない。過去へワープするようなものだが、頭の中だけでは飛んでいける。しかし、その必要性は何もなく、過去に思いをはせる程度。
 もし、その道が旧街道だと知らない人が、鎧武者の一団が駆けていくのを見たとすれば、これは頭の中の想像上の出来事ではないが、そんなことが日常的に起こっている話など、とんと聞かない。よくある話ではなく、まずはないだろうと言えるような話。
 そういうことが起こる可能性を考えたとしても、うまく説明できない。しかし、この説明も、騎馬武者などを見た人がいての話。
 風景の記憶というのを想定すれば、興味深い答えが出てきたりする。人に記憶があるように、風景にもあったとすれば、の話だ、この場合、風景とは空間だろう。つまり、空間の記憶、燃えカスのようなものだと思えば、何とかなる。
 しかし、時間と空間はセットものだとすれば、同じ空間で別の時間が介入することは、考えにくい。ただ、同じ空間で複数の世界は存在するかもしれない。パラレルワールドだ。
 ファンタジーとは、強引にこじつけた遊びかもしれないが、人が想像したことは、実証されなくても、その人分限りで存在する。これは妄想に近い。
 しかし、そこまで凄い世界ではなくても、ちょっとした勘違いで道に迷ったり、知っている場所なのに知らない街角に見えたりすることはある。決して異次元へは飛ばないが、それに近い体験はあるだろう。こちらが原型になっているのかもしれない。
 
   了


posted by 川崎ゆきお at 10:32| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする