2016年12月26日

3122話 破局のボーナス


 年の瀬に破格なボーナスを貰った大石は落ち着かない。このボーナスの多さは納得できる。それだけの仕事をしたためではなく、「黙っておれよ」ということだ。会社の不正を知っていた。それで膨大な利益を得ていたはず。社長に罪悪感があるのだろうか。しかしそんな人が不正をするとは思えない。これは会長が仕込んだことだろう。社長はお飾りのようなものだが、ボーナスを最終的に決めるのは、この社長。これは会長に対してのイヤミかもしれない。
 それよりも、破格のボーナスというのは、予定になかった。この年末に買おうとしていたものを変更しないといけない。一つ上のものが買えるどころか、複数のものが買える。しかし、これはあぶく銭のようなもので、不正がばれて来年の夏のボーナスなどなかったりしそうだ。そのため、残しておいた方が賢明だが、どちらにしても独り身なので、ボーナスは遊びで使っている。
 既にこの冬に買うものは決めていたのだが、予算内で収めるため、高いものではない。本当に欲しい物はもっと高く、所謂高嶺の花。その高嶺など簡単に乗り越えられるほどの額がある。急にこの高嶺が低い山に見えてきた。
 大石は浮き足だった。高嶺まで飛んでいきそうだ。しかし、足が地に着いていない。ここで一人バブルをするようなもので、これはその反動が怖い。一瞬のあぶく銭なのだ。
 身に余るものを買う。分不相応なものを買う。これは夢だ。いつかそういうものを買うときがあるだろうという希望。それが実現しそうなのだが、夢の一つが消えてしまう。
 仕事は苦しくはないが、辛いときやお金がなくて買えないときの楽しみなのだ。そしてそれが励みになる。
 大石は物を得ることで幸せになれるタイプで、人生の諸問題はあまり気にしていない。幸せは金では買えないが、幸福感が違うのだろう。その底に流れているのは人生は不幸なものという考えで、不幸で普通。ここはどう弄っても何ともならない。心がけを変えても、その反動がすぐに出てしまう。
 それで小遣い銭程度で買えるものを得て、しばしの間、幸せな気分になる。これはすぐに終わるのだが、一種のイベントのようなもの。
 しかし、今回は困った。身に余る小遣いを得たようなものだ。
 そしてそこから大石のバブル極楽がスタートするのだが、案の定、春を待たないで、会社は倒産した。社長はそれが分かっていたのだろう。
 雇われ社長だったその人は小さな会社を興した。大石は付いていった。
 
   了


posted by 川崎ゆきお at 10:19| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする