2017年01月01日

3128話 宮鳴り


 鳴宮は音と関係する神社だが、聞いた人はほとんどいない。それを知らない人は、鳴っていても聞こえない。それほど低い音のため。
 宮鳴りというのがあるらしく、宮が地鳴りのような音を立てている。樹木なども音を立てるが、それは水が上がっていく音。ポンプのように吸い上げているのだ。
 古い家では家鳴りがする。これはきしんでいるのだろう。鳴宮は何度か建て替えられているので、今はそれほど古くはない。古い宮でも、その中にいないと聞こえないだろう。家鳴りが外から聞き取りにくいように。そして昼間、鳴っていても外の騒音などで聞こえない。ただ、ラップのように、高い音は別だが。
 鳴宮の宮鳴りは、宮ではなく、地面からではないかと言われているが、それなら地鳴りで、土砂崩れの危険性があるが、それ以前にここは平地。空洞のある大きな地下水道でも走っているのかもしれない。また断層が走っているという噂もない。
 鳴宮の歴史は古く、平安時代の記録にあるが、いつ、誰が建てたものかは分からない。おそらく今、現存するような神社の系譜とは違うのだろう。鳴宮が先にあるのではなく、音が先にあったのかもしれない。地形的には平凡で、なだらかな平地。周辺との高低差は殆どない。山も川も遠いが、奈良時代、溜池が掘られたらしい。その後も溜池は増えているが、今は一つも残っていない。宅地になったため。
 どうしてここで音が鳴るのかは分からない。しかし、古くから音の鳴る場所として知られていたのか、そこに宮を建てた。宮、神社だが、神の住む場所、または普段はいないが、神がいる場所として建っているのだが、この鳴宮の神は分からない。今の鳴宮はありふれた神様が祭られている。これはとりあえずだ。本当の神は、この音のヌシ。そしてそれを鎮めるため、宮を建てた。やはり不気味だった。
 そのため宮がなくても音がするので、宮鳴りとは言えないが、いつの間にか、それを宮鳴りと言うようになった。神様の名が分からないし、怖くて誰も付けなかった。それで適当に付けたのが、鳴宮。
 そして今はそんな音はしない。また、耳を澄ませば聞こえるのかもしれないが、ある時期から普通の村の氏神様になったためか大人しくしている。
 古老は音なし神社と呼ぶこともある。
 
   了


posted by 川崎ゆきお at 12:21| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする