2017年01月15日

3142話 孤独な日々


 小春日和のポカポカ陽気で、風もなく暖かい。良い日だ。しかし坂上は陰鬱な顔。最初からそんな顔なので目立たないが、眉間の縦皺がいつもより深い。眉間の皺を立てすぎ、今ではキズのように取れなくなっている。しかし、その生活は至ってのんきなものだし、その性格ものんき者。
 眉間に皺を寄せるのは癖だが、意味なく寄せているわけではない。嫌なことあるときに限られる。坂上は最近嫌な用事が増え、機嫌が良くない。大した用事ではないのだが、普段ならしなくてもいいようなこと、また初めてやるようなことはプレッシャーがかかるのだろう。いつものことをいつも通りやるのが坂上の日常。それが壊されるのが嫌。自分から進んでやることならいいが、つまらない雑用だ。
 坂上のスケジュールは太平洋のど真ん中にいるように、何もない。または大草原にいるようなもので、スケジュール表は真っ白。全て空き地。その日々、時間をどう使おうと自由だが、意外と昨日と同じ様なことを今日も繰り返しやりたいようだ。変化を望まないというより、邪魔臭いのだろう。
 その空き地にポツリポツリとスケジュールが書き込まれている。これがどうも気に入らない。絶対に行かなければならない日や、時間帯があるのが気に入らない。気が向けば行く程度ならいいが、絶対だ。
 それらの用事は悪いものではなく、坂上が得をする話なのだが、別にそんな得をしなくてもいいと思っている。
 そして、今日はその件で出掛ける日。だから顔が一段と険しい。
 いつもの何でもないような一日を過ごしたいのだ。
 隠居暮らしが長いので、何もしなくてもいい日々がディフォルトになっている。
 では何もしなくてもいい日に何をしているかだ。結構色々と忙しく出歩いている。それらは有為なことではないので、何もしていないのと同等だが、本当は一日のスケジュールがきついほど。しかし、しなくてもいいことなので、全部取りやめても支障はない。
 そして、今朝はそれではなく、有為な用事で、駅までの道を歩いている。本来なら川沿いの道を散歩している時間。そこは自分の時間であり、自分の風景。
 さて、出掛けた先だが、そこでは愛想良く振る舞い、眉間の皺も浅くしている。そして笑顔を絶やさない。これは帰ってから顔の筋肉が痛くなるが。
 世の中には孤独を愛する人が昔からいる。自分の世界で暮らしたいのだろう。
 そういう人は難しそうな顔付きで歩いているが、内面はそれほどでもないようだ。
 
   了

 
posted by 川崎ゆきお at 10:57| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする