2017年01月29日

3155話 梅台の怪


 山というほどではないので、丘だろうか。市街地の外れで、梅台町。住宅地だ。桜台や桃台はよく聞くが、梅台は珍しい。丘の斜面が梅畑だった。今は当時の梅は一本も生えていないのは、ブルドーザーで削り取ったため。斜面に台を造り、家が生えた棚田のようなもの。
 しかし、梅の木は生えている。これは庭木として売られているもので、梅干し用ではない。梅台に来た人は、それが名残だと勘違いしやすい。
 丘なので標高は低く、山頂というほどの場所もない。てっぺんまで家が建っている。流石に丘の裏側は傾斜がきつく、雑木林のままだが、神社や寺があり、その参道などが近所の人の散歩コースになっている。一寸した山のようなもので、ここに入り込むと静かだ。
 丘の向こう側はまだ農家が残る田園風景だが、それほど広くはなく、また、ここにも家が建ち始めており、その先は本格的な山の裾野になるが、大学や会館、それに大きな総合病院などが見える。その先は山間の町や村が続く。
 問題は丘の裏側だ。ここは裏側にある村と関係する。表側は既に市街地なので、もう村はないが、こちらの方が豊かな村だった。田んぼも広い。しかし山を分け合った。表側と裏側に。そして表側は山の形が変わるほど変わったが、裏側はそのまま残っている。神社や寺も裏の村のものだ。
 近所の人の散歩コースになっているのだが、遭難する人がいる。見晴らしが悪いためと、山頂らしきものがしっかりとしていないので、方角が分かりにくい。
 裏の村の人達は、ここを迷い山と呼んでいる。丘だが、襞が多くあり、さらに里山なので、道が多い。さらに村の墓場跡もある。土葬時代のものだ。丘の裏側と、そこにある村の端っこの雑木林とが接しており、丘ではなく、山に入り込むのだろう。
 しかし二人では迷わないが一人で歩いていると、迷いやすいらしい。下から市街地の騒音が聞こえてきそうな場所なのだが、丘から降りられなくなり、長い時間歩き続けたとか。そして出てきたときは、その丘ではなく、かなり離れたところだったする。もうあの丘が見えないほど離れた。
 狭い場所だが山の怖さがそれなりにある。
 そして梅畑時代の梅の古木が、この裏側に一本だけ残っている。既に枯れており、幹だけ。そのため、梅の古木が化かすのだと、裏側の村の人は言っている。
 
   了

posted by 川崎ゆきお at 10:42| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする