2017年09月26日

3394話 満席の日


 疋田は安いファスト系喫茶店へ毎日通っているのだが、たまに座れないほど人が多い日がある。これは年に一度もあるかないか。
 その日は秋晴れの日曜日。ショッピングモールは自転車を止めるときから既に満車。止める場所を探すのが難しい。
 しかし、その喫茶店はいつもすいている。人出の多い日でも余裕を持って座れる。それで疋田は安心していたのだが、自転車を止めるとき、遠目で見ると、人が大勢座っている。そんなことは滅多にない。何かの偶然が重なったというより、他の飲食系の店が満員なので、流れてきたのだろう。この安い喫茶店しか開いていないので、仕方なしに、かもしれない。
 疋田は買い物でもして、時間をずらすことにした。入る前から座れないことは分かっているし、この店で空席待ちの客が並んでいる姿も見たことがない。
 そこで疋田は家電を見に行くことにしたのだが、せっかく安い喫茶店で節約しているのに、余計なものを見て衝動買いなどする危険性がある。そこで、実用性の高い衣料品店を覗いた。季節は秋。既に冬物に近いのが並んでいるので、衝動買いの危険度はない。今すぐ着られるようなものなら別だが、ひとシーズン先のものなど買わないだろう。しかし、夏物の売れ残りがあり、その値段が下がっているので、今がチャンス。だが消化できないほど同じものを持っているので、消費欲はあって、買うものがない。
 そして家電店へ行くと、新製品が出る前は値段がガタンと落ちていたのに、新製品が出た瞬間、ガタンと値が上がった。何だろう、この現象は、と思ったのは、新製品の評判が芳しくなかったのだろう。逆に旧製品の値打ちが上がった感じだ。どちらにしても値がさらに下がっておれば衝動買いしたかもしれないが、上がっているので、それはなく、無事に家電店を出る。
 そして喫茶店を覗くと、まだ客が多い。どのテーブルにも人がいる。こんなに流行っている状態を見るのは年に一度もないだろう。
 それで、また買う気はないが、買い物の続きをすることにしたが、安いパン屋があるのを思いだし、そこでパンを買う。これを夕食にするという真面目な展開なので、問題はない。それに夕食代も安くつく。
 それで、また喫茶店を覗くと、所々に空きがある。これならいけると思い、ドアを開ける。
 日々同じ様なようで、年に一度、こういう展開になることもあるのだ。
 それだけの話だが、この事はしばらく覚えているだろう。いつもがら空きだが、座れない日が年に一度程度はあることを。
 だが、もの凄く重要なことではない。
 
   了
 
posted by 川崎ゆきお at 10:28| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする