2017年10月03日

3401話 運動会の日のコンビニ


 赤西は煙草が切れていることが分かっていたので、途中でコンビニへ寄ることにした。煙草は二本残っている。目的地は喫茶店。そこへ行くまで一本吸う。そして店内で二本以上は吸う。これは二本でもいい。しかし一本ではだめだ。一本のときもあるが、煙草を吸う暇もないほど、何かに熱中しているときに限られる。要するに一本足りない。
 だから簡単な話で喫茶店までの道で買えばいいだけ。しかし今吸いたい。家を出たところでいつも煙草の火を付ける。その癖があるためだ。吸えばいいのではないかという話だが、それでは吸い終わらない間にコンビニに着いてしまう。それはもったいない。だからコンビニで買ってから吸えばいい。その場合、喫茶店までの距離を考えれば、時間は充分ある。
 よく晴れた土曜日の昼頃。
 いつもの道からコンビニへ寄るため、少し道を変える。こういう変化は実はしたくない。それに晴れているので陽射しがあり、夏のように暑い。いつもの道なら日影があるのだが、コンビニへの寄り道ではそれがない。真夏に比べれば楽なものだが、少し汗ばんでしまった。
 コンビニが近付いて来た。人が出て来るのが見える。昼頃なので、混んでいるのかもしれない。しかし、すぐにその理由が分かった。近くから音がする。小学校から聞こえてくるので、これは運動会だろう。その親たちが何か買っているのだ。このコンビニはいつも客は少ない。これでやっていけるのかどうか、心配になる。暇な店だけに店員の動きものろい。急ぐ必要がないためだろう。
 赤西はドアを開ける。開けなくても店内は見えているが、念のため、中を覗いた。レジに人が大勢いるのだ。その程度を見るため、中に入ったのだが、後列が見えない。そして途切れない。しかし、前の駐車場はがらんとしている。これは小学校に駐車場がないためだろう。自転車はそれなりに止まっているが、一杯ではない。運動会を見に来た人は近所の人なので、歩いてでも行ける距離のためだろう。
 これだけ並んでいると、煙草だけを買うにはふさわしくない。並んでまで買うと、喫茶店での滞在時間が押し気味になる。それで、喫茶店までの道にもう一軒普通の煙草屋があることを思いだした。そこなら自転車に乗ったまま買えるのだが、喫茶店との距離が近すぎるため、選択肢にはなかったが、そこに行くことにし、出ようとすると、入って来た客とぶつかった。譲り合いながら、交差したのだが、満員だね、とその人も驚いたようだ。
 ドア近くにいると、出てくる客の邪魔になるので、赤西は自転車置き場に戻り、そこで煙草を吸うことにした。貼り紙やポスターの間から店内が見えるのだが、列は流れ、客が出ていくのが見える。しかし、列はまだまだ続いているようだし、まだ並んでいない客もびっしりといる。それらの客はゆっくりと移動しているのだが、確実にドアから人が出ていくわりには減らない。
 そして、先ほどドアのところで交差した客以外、入ってくる人はいない。出る一方だ。しかし減らない。ではそれらの客はどこから入って来ているのだ。コンビニなので出口は一つ。しかし裏側にもドアがある。その裏側のドアも入るときに見ているが、人などいない。
 結論は簡単だ。店内から湧き出ているのだ。
 赤西はぞっとし、すぐに自転車を出した。
 
   了

posted by 川崎ゆきお at 10:59| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする