2017年10月19日

3417話 調子の悪いとき


「一方は調子の良いとき、もう一方が悪いですねえ」
「ほう」
「一方が調子の悪いとき、もう片一方が調子が良いです」
「一方が勝てば、一方が負けるということですね」
「それもありますが、自分自身の調子でもそれがあります」
「ほう」
「仕事が上手くいっていないときは、趣味がいい感じで進んでいたりとかね」
「じゃ、趣味の調子が悪いときは、仕事の調子が良いと」
「さあ、それは分かりません。趣味も仕事も調子が悪いこともあります。まあ、仕事が上手くいっていないとき、遊んでいても楽しくないでしょ」
「そういう人もいますねえ」
「遊んでいても、その遊びの調子が今一つのことが多いです」
「じゃ、一方が良いとき一方が悪いというのは」
「どの一方かが分からなかったりします」
「え」
「その一方が、どの一方かが、分からないのです」
「でも調子を見れば分かるでしょ」
「そうですねえ。気付かないだけかもしれません。それほど楽しいことではないことでも、意外とすんなりといった場合、楽しい思いとまではいかないので、実感がないのでしょ。実はこのすんなりが、調子が良いということです。しかし、気付いていないことが多いです」
「つまり一方の調子が悪いとき、何処か違うところが調子が良いということですね」
「そうです」
「それだけのことですか」
「はい」
「何か思い当たることがあって、そう言っているのですね」
「そうです。ただの個人的な感想のようなものです」
「はい」
「調子が良いとき、別の箇所の調子が悪くなります。まるで埋め合わせ、帳尻を合わせるようにね」
「調子が良すぎて、やり過ぎて、体調を崩すとか、他のことが疎かになるとかですか」
「ですから、片一方なのか、複数の一方なのかは分かりません。また何処で出るのかも分かりません。当然調子が悪いとか良いとか以外に、悪い偶然とか良い偶然もあります。別に何もしていないのにね。偶然と見えていても、それは原因があることもありますから、一概には言えませんが」
「法則のようなものがあるのですか」
「そう思えばそう思えないこともないような法則です。その場で作ったような法則でしょうか。法則は見出すものです。そしてこういったソフトな法則には例外がいくらでもあります。当てはまらないことがね。まあ、単純な法則ならいいのですが、世の中単純なものの集まりでも、集まると違ってくるでしょ。複雑になりますので法則も複雑になります。複数の法則を掛け合わさないと見えてきませんが、法則は単純な方がよろしい」
「一方が良いとき一方が悪くなるなんて、単純な法則ですねえ」
「さあ、法則と言えるかどうかは分かりませんが、そういう傾向があるという程度のものでしょ」
「ただ」
「何ですか」
「調子の悪いとき、何処かで調子の良いものがあるというだけでも、慰めになるでしょ」
「はあ」
「その逆もありますがね。調子が良いときは、何処かで悪い芽が芽吹いているわけですから」
「じゃ、調子の悪いときには、その法則、使えますねえ」
「そうです。単純なことです。悪いことばかりじゃないよって程度のね」
「ありふれた結論ですねえ」
「ただの慰めなんでしょうねえ、きっと。しかし、本当に調子の悪いとき、別のことがもの凄く上手く行くときがあるのです。これ、利用できますよ」
「はい、利用して下さい」
「そうしています」
 
   了

posted by 川崎ゆきお at 10:54| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする