2017年11月14日

3442話 敵意の発生


 白木氏の城をいくつか潰し、残るは本拠地だけ。もうこのとき白木軍は殆ど残っていない。前線で主力軍が敗走したため、勝敗は既についていた。
 しかし、白木城に迫ったとき、隣国の黒崎軍が援軍で来ていたのだ。
 攻め手の立花氏は大国で、大軍を連れてきたが、あとは大したことはないと、軍団の多くを帰還させていた。そのため、攻め手の方が兵が少ない。
 立花氏はむかっときた。白木軍に対してではなく、援軍で駆けつけた黒崎軍に対して。きっと白木軍には受けただろう。同盟国の義理を果たし、来てくれたのだから。
 立花氏は、これでは城攻めどころか、このままでは立花軍がやられてしまう。引き返した軍団を呼び戻せばいいのだが、疲労度の少ない新手の黒崎軍は気勢も上がり、まともに戦うのは避けたい。それに白木氏は滅ぼさないといけないが、黒崎氏には敵意はなく、その領土を奪う気もない。だから敵としては考えていなかった。ところが白木軍に加勢し、結果的には立花氏に刃向かったことになる。これでムカッとした。
 立花氏は伝令を飛ばし、帰還中の各軍団に指示を与えた。黒崎領に侵攻せよと。
 立花氏は白木黒崎軍と対峙し、睨み合ったまま動かない。つまり黒崎軍を引き付けていたのだ。動かないように。
 この策は当たった。白木城に駆けつけた黒崎軍は全軍で来ていた。これは実際には戦う必要がない。立花軍は迂闊には動けないだろうし、兵糧も心許くなるはずだし、士気も下がりだし、そのうち引き上げるだろうと思っていたのだ。
 その魂胆が立花氏をむかつかせたのだろう。
 主力を持ってきた黒崎の本拠地はガラガラ。そこへ立花の主力軍が攻め込んだので、ひとたまりもない。
 その報を聞いた白木城の黒崎軍は、すぐに引き返したのだが、既に戦いは終わっていた。
 援軍が去ってしまった白木氏は、白旗を揚げ、城を降りた。立花氏は白木氏を家臣とし、白木領をそのまま任せることにした。ここは治めにくい土地なので、地の人間に任せた方がよかったのだ。
 しかし、黒崎氏は追放した。当然領地は没収、立花一族の家臣を入れた。実は白木領より、黒木領の方が大きい。だが、黒木領を取ることは念頭になかった。悪意も好意もないが、黒木軍は強く、出城も多いので、容易には落とせないことも理由だった。
 黒崎軍にもチャンスがあった。援軍として来たまではよかったのだが、動かなかったのだ。このとき、攻め手の白木軍は僅かで、主力は返していたのだから、城から打って出れば、訳なく立花氏の首が取れた。そして大国を手に入れることができたかもしれない。
 しかし、黒崎氏は援軍で、立花氏は、ここでは敵だが、敵意を持っていたわけではない。両者とも戦う気はなかったのである。
 あと一歩で簡単に手に入る戦いを邪魔立てした援軍の黒崎が余程憎たらしかったのだろう。敵意が生まれたのは、その瞬間だった。
 
   了
 
posted by 川崎ゆきお at 10:36| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする