2017年11月19日

3447話 看板通り


 デパートのようなターミナルビルを抜けると商店街があり、そこは既に寂れており、アーケードはあるが駅までのただの道に近い。そのトンネルを抜けると日向臭い場所に出る。商店がまばらに並んでいる場末。それもすぐに途切れ、住宅地になる。
 その通りに古書店がある。入り口に湿って曲がったような文庫本が並んでいるが、表紙は変色し、平積みの表紙も埃を被っている。一冊も動いていないのだろう。チリハライがないわけがないが、そのまま放置。その向かいに薬局がある。ペンギン薬局とあり、いつの時代のマスコット人形か分からないほど老いたペンギンが、もう焦点が分からなくなったような目で通りを見ている。
 この二店、商店街から商店街八分にされたと噂があるが、肝心の商店街が寂れたため、別に駅前に店を構えても仕方がないので、同じようなもの。
 商店街八分とは村八分のようなもので、葬儀や災害以外は一切の付き合いが絶たれた家に近いが、実は弾かれたのではなく、最初から場末のさらに向こう側で営業している。
 この駅のある街では古書店と薬局だが、他の街ではテイラーや散髪屋になっていたりする。いずれにしても客は最初から少ないし、その後、盛り返して流行るようなことはない。主人の愛想が悪く、もう二度と来たくないような店で、まるで客を拒否しているような構え。
 当然そんな状態だし場所が悪いので一見の客も殆どないので、やっていけるはずがない。しかし、メイン商店街は潰れても、ここは潰れない。潰れて当然だが、最初から潰れているような状態で店をやっている。
 だから店屋ではない。こういう店が駅前や商店街のある通りの場末のさらに末で店を構えている。
 それらの店は繋がりがある。目的が同じためだ。表向きは商店だが、実は支部なのだ。しかも支部には正と副二組で構成されている。
 普通の商店街にあるような店はほぼ網羅されている。それらを合わせれば、かなり大きな商店街になるはず。だが、目的は商店ではなく、商売ではない。
 このネットワークが何のためにあるのかは分からないが、世襲制で、今は孫の代。その孫の子が継げば四代目の組織員になるのだが、御時世か、どの支部もあとを継ぎたがらない。
 そしてこの組織のトップも世襲制だが、同じ現象が起こっている。そしてもうそんな組織など必要ではなくなっていたためか、閉める店、ここでは支部だが、それが多くなった。本来なら勝手に閉めるわけにはいかないのだが、本部も黙認だ。
 中にはあとを継いだ支部もある。四代目でまだ若い。そしてもう支部ではなく、看板通りの商売を続けている。
 商店街を抜け、場末のさらに末でポツンとある店を見かけた場合、それと疑ってみてもいい。
 世の中には看板通りではない店屋もあるということだ。
 
   了
posted by 川崎ゆきお at 10:40| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする