2017年11月20日

3448話 ペテン師


 都会の賑やかな場所で声をかけられた場合、あまり良いことにはならないので無視する方がいい。それが客引きなら分かりやすいが、一見して普通の通行人のような人の方が危ない。
 では普通の通行人とは何だろう。その場所に用事があって来ている人や、ただの通り道なので歩いている人。当然仕事で移動している人や勤め帰りの人。これは夕方だろう。朝はラッシュで人も多く、ややこしいことを仕掛ける人も少ないだろう。それに悪い奴ほど起きるのが遅いため、早朝は苦手。
 都会では見知らぬ人と会話するようなことは希。道を聞かれる程度。勧誘の場合、それとなく分かる。
 ところが怪しい人は普通の会話から入ってくる。夏なら暑いですねえ、冬なら寒いですねえ。春秋なら良い季候になりまいたねえ。雨なら鬱陶しいですねえ。晴れなら良い天気ですねえ、と。これで乗ってこなければ、それ以上話さない。これは信号待ちのとき、独り言のように話しかけてくる。無視されれば独り言で終わる。
 要するに顔見知りでもないような普通の人が話しかけてくるのがポイントで、見るからに得体の知れない人ではなく、普通の通行人。この普通の中に紛れ込んでいるので、見分けが付きにくい。だから話しかけてくることが普通ではないということだろう。これが都会育ちではない老婆なら別かもしれない。見知らぬ人にでも話しかける。だが都会の雑踏の中に一人で来ているような老婆は滅多にいない。いることはいるが、それ自体、もう既に怪しいので、分かりやすいが、この判断は難しい。ただの気安い婆さんかプロなのかを。
 さて、その怪しい人の中身だが、そこでの話は話しかけた側だけが最終的に得をする話だろう。だから世間話から始まり、それに乗り、聞き役になったりすると徐々に相手のペースに填まっていく。
 また、怪しいとは思いながらも、暇なとき、もう少し泳がしてみようと思うこともあるが、これもまた危険だ。話のネタになる前に、もうそんなことは話せなくなるほど思い出したくもないネタになる。
 酒場などで見知らぬ客と意気投合するというのはある。もし怪しそうな客がいる場合、敢えてこちらから話しかけたりするので、怪しい人が逆転するが。
 都会の人混み、そこに出る怪しい人は年々減っているように思える。街頭流しが減ったためだろう。あまり効率がよくないからだ。残っているのはヘボい怪人で、これは大した被害にはならない。
 昔の都会には最初から怪しげな人が結構うろついていた。もの凄く分かりやすい感じで。数も多かったのだろう。
 今は普通の社会人の中に怪人がおり、スマホ時代ではないが、見た目はスマートだ。
 
   了

posted by 川崎ゆきお at 11:04| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする