2017年12月03日

3461話 岬の巫女


 小さな岬の先端に神社がある。灯台があるような場所だが、岬は複数出ており、この神社の岬は奥まったところにあるので、灯台は別の岬にある。それでも昔はあったらしい。湾内を行き交う船のためだろう。しかし、明かりを灯しに行くのが面倒らしく、灯台があったのは僅かな期間だったようだ。
 今は岬近くの家々は廃村状態で、残る人だけが残っている。新しい建物もたまには建つので、まだまだ人が住む人家があるだけまし。
 さて岬の神社だが、風雲神社。御神体は竜ではない。この岬から見る冬の夕焼けが不気味なことで知られている。風のある日、雲が千切れ、不気味な黒雲が不規則に蠢き、まるで生き物のようだ。何か異変でも起こりそうな雰囲気だが、竜が天に昇る勢いのいい風雲ではなく、実は風運。
 風雲でも風運でもどちらでもいいが、そういう名の社が岬にあり、御神体はなく、占い婆さんが住んでいた。だから神社ではなく、住居兼占い所。
 怪しまれないように小さな鳥居が立ち、これが朱色なので非常に目立つ。決して怪しい家ではありませんよと示そうとしているのだが、余計に怪しい。
 周辺の家々では岬の巫女の家と呼んでいる。
 その占い方は風占い。風は見えないので、形となって現れる雲を見ての占い。岬から内海を経て外海まで遠く見渡せるため、展望がいい。特に冬場の夕焼け空は不吉なほど異様。その雲の形や流れから岬の巫女が占うことになる。当然冬場だけではなく、どの季節でもいいが、夕方に限られる。その刻限、雲の変化が大きいためだろう。
 実際には雲を見ているのではなく、風を見ているのだが、その人の風雲をそこから読み取るらしい。だから風運でも風雲でもかまわない。
 天の動きは同じ。だからそれを個人に当てはめても全員同じになってしまう。雲が不気味なら、その人の運気も不気味と出る。これでは占いにならない。
 灯台は海だけ見えるわけではなく、この岬からは陸側も遠く見渡せる。三百六十度のパノラマなのだ。額縁のような木枠があり、それがテーブルの上で回転する。生年月日で方角を得て、そこで額を止めると、風景を切り取れる。それを見て、個人の運勢を占う。
 今は当然そんな神社のような占い所はない。周辺の家々が減り、客が減ったためだ。遠くからわざわざ人が来るほどの評判はなく、そのうち怪しげな巫女ということで追放された。本当の理由は国有地に勝手に家を建てていたため追い出された。
 この岬の巫女、灯台下暗しではないが、自分の運命は占えなかったようだ。しかし占わなくても分かるような話だが。
 
   了

posted by 川崎ゆきお at 10:39| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする