2018年01月02日

3491話 玉手箱


 常世の国から玉手箱を持ち帰った北島は、開けるかどうかと迷った。玉手箱の意味を知っているからだ。しかし、常世の国では玉手箱といっているが、別のものかもしれない。
 それは宝箱かもしれないし、パンドラの箱かもしれない。一番いいのは宝箱。しかし、どんな宝だろう。これが大判や金塊や宝石類ならもっと重いはず。持った感じスカスカで、箱の重さ程度しかないように思える。だから通常の玉手箱で煙りしか入っていないのだろう。
 それなら開けると白髪のお爺さんになってしまう。一気に時が立ち、その間の北島の人生はなかったも同然。北島だけが時を経るのではなく、周囲も経ており、もう北島を知っている人もいなくなる。
 パンドラの箱ならどうだ。これは開けると全ての災いなどが飛び出し、パニックになるが、直ぐに閉めれば希望だけ底に残るらしい。だから希望を得るには、まずは災いを先に走らせないといけないことになる。希望などいつでも手に入る。しかし、いい状態のときは逆に希望が希薄になるだろう。満ち足りているため。
 北島は常世の国。これは島だった。そこの姫と夫婦になるが、風の便りで親が死にかかっているので、見に行ったのだ。しかし姫はここを出た人は二度と戻ってこないことを知っていた。それで餞別代わりに玉手箱を渡したのだ。
 北島はその意味が分からなかった。ただのお土産だと勘違いした。しかし、玉手箱を持ち帰った人の話を知っている。開けると老いるし、周囲も様変わりする。親の家はもうないほど村も変わってしまっているだろう。病気の親を見舞いに行けなくなる。
 開けるとやはり宝箱で、軽いがものすごく価値があり、直ぐに換金できるものが入っていたとすれば、薬代になるし、医者にも診せられる。しかし、何が入っているのかは分からない。
 北島は浜辺から村へ戻る途中、気になって気になって仕方がない。それに持ち歩くのも邪魔だ。
 そして親の家が見える砂山の上で開けてしまった。案の定白い煙が出た。正真正銘の玉手箱だった。周囲が煙で真っ白になる。自分の髪の毛も真っ白だろうと思い、一本抜いてみたが黒い。身体を見ても老いている様子はない。
 やがて煙が引いたとき、姫が嬉しそうな顔で立っているのが見えた。
 ワープ装置だったのだ。
 
   了

posted by 川崎ゆきお at 12:57| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする