2018年02月10日

3530話 白根峰西へ一里


 白根峰から西へ一里とある。白根峰は高い山塊ではないのだが、雪が積もる。豪雪地帯ではないが、大陸方面からの寒風の通り道なのだろう。まるで日本海側からの風を羽を広げて受け止めているような。それで白根峰と言ったらしいが、実際には白樺の森があり、遠くから見ていると雪のように白いためだとも言われている。標高はそれほどないし、冬場ずっと雪を被っているわけではないので、白樺説が正しいのかもしれない。今は白樺など何処にもない。
 さて、白根峰から西へ一里だが、この峰は先ほど言ったように羽を広げたように長い。そして一里は短いので白樺峰との距離感が微妙。頂上を基点にしても、峰内の何処かになる。
 白樺峰の西は別の山々がずっと続いている。当然名はある。はっきりと分かるくびれがあり、川が境界線となり、別の山だとはっきりと分かる。川向こうの山は武山で低い。
 白根峰の西へ一里なら、この武山の山中となる。その基準を白根峰の端にある川とした場合だ。
 ただ、正しくは武山は西ではなく、南寄りなので、南西だろう。しかし、西にある目立ったものはこの武山だけ。だが、武山も古くから名のある山なので、白根峰の西などと言わず、武山だと記した方が早い。だから、白根峰の西一里は武山ではないことになる。
 一里は約四キロほど。白根山の基点が分からないが、昔の人の視点で立つと、白根山に登り、そこから見て一里なのか、白根山を下から見ながら、そこから見ての一里なのか、どちらかだが、どちらも基点が分からない。麓といっても広いが、西側が見える位置なのかもしれないが、これも分からない。当然この峰には峰道があり、山の頂といっても長い。一番高い場所がそれらしく思えるが、そこから一里では白根峰から出ないことになる。
「分かりましたか、白根峰の西一里にあるもの」
「これは手掛かりがあるようでないですねえ」
「一番高いところから、西へ四キロほどの地点へは行かれましたか」
「はい、斜面です。林道から分け入って、丁度一里のところに行きましたが、目だったものは何もありません」
「この山、殆ど植林でしょ」
「はい、杉の木だらけでした」
「二千年以上前の話ですからねえ。このへんは原生林でしょ」
「白樺とか」
「さあ、白樺が生えだしたのはいつ頃からかは分かりません」
「しかし、二千年前、本当にここに古代王朝があったのでしょか」
「冬場、ここは雪がよく積もります。この近くの山よりもね」
「それが何か」
「風です」
「寒いので風邪」
「そうじゃなく、大陸から一気にここへ渡れる」
「日本海をですか」
「大陸のある種族が、渡ってきてもおかしくはない」
「それで古代王朝を」
「その痕跡を昔の人は見たのでしょうねえ」
「本当ですか」
「この古文書は聞いた話を書き留めたものです。白根峰の西一里に何かあるぞと」
「本当でしょうか」
「想像です」
 
   了

posted by 川崎ゆきお at 12:02| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする