2018年05月07日

3617話 謗法寺の秘仏


 謗法寺の秘仏というのは伝説の仏像。見た人は誰もいない。それよりも謗法寺という寺は燃えて今はない。さらにそれよりも謗法とは仏法を誹ること。だからそんな寺が存在するわけがない。
 その秘仏は長野の善光寺の秘仏よりも古いとされている。そのため、この国で作られたものではない。
 謗法寺は記録にあるだけ。当時本当に謗法寺と言っていたのかは分からない。その近くに今は神社がある。おそらく謗法寺跡にできた神社だろうと言われている。この神社が謗法寺と言い出したのかもしれないが、この神社も今はないが、その近くに鳥居だけがあるような神社が山の取っかかりにある。その山が霊山のためだ。山の神様を祭っているのではなく、その山が神。
 最近になってその霊山神社ゆかりの旧家から謗法寺や秘仏に関する聞き書きが発見された。
 謗法寺は燃えたのだが、これは燃やされたのだろう。事前にそれが分かっていたらしく、本尊を隠した。これが秘仏と言われるもので、寺に隠したのではなく、山に隠した。その場所が記されていた。
 場所は霊山の頂にある祠。昔は里の人は山頂に登る用事などないし、山々で暮らす民も、この霊山はポツンとあるので、尾根伝いの山の道からも外れている。名山ではなく、高くもないので、頂上まで木が茂っている。里から見ると、この山は非常に目立つ。山脈ではなく、ポツンと聳えているためだ。それで山の神様が住むとされた。
 頂上付近にある祠といっても斜面の崖をくり抜いたもので、人が入れるような広さはない。岩に空けた穴のようなもので、そこに秘仏を隠したとある。飛鳥時代の話なので、そんなものは埋もれてしまっているだろう。
 この秘仏は仏様のお姿らしいが、神として祭られている。神像だ。神様には実は姿がない。人なのかさえ分からないし、形がない。そこが仏との違いだ。それで、海を渡って来た異形のお顔や服装が珍しく、見たことのない人種なので、これを神像としたようだ。これが謗法寺の御本尊だとされるのだが眉唾物。それに先にも触れたように謗法寺の本当の名は分からない。何処かで山岳信仰と引っ付いてしまったのだろう。
 さて、山の神様ゆかりの鳥居で最近行われる山開きの行事や、山の神様の行事のとき、この秘仏の話をやっている。何処かは分からないが、山頂近くの斜面に祭られていると。それが神像ではなく、仏像なのが妙だが、その説明のために謗法寺の話が出てくる。
 山の神様が聞いたら、怒りそうな話だ。
 
   了


posted by 川崎ゆきお at 11:31| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする