2018年05月31日

3641話 決戦の時


 平田家と高砂家は仲が悪い。隣接しているためだろう。油断しているといつの間にか領内の村が取られていたりする。これは領主替えで、村が勝手にやること。隣国が占拠したわけではない。村が自主的にやったことなので、手が出せない。お互いにそんなことをやり合っているうちに、そろそろ決着を付ける時期に来ている。
「近いですなあ」
 この二つの領地と隣接する宮田家の管領が言う。宮田家は宮家を祖としており、土着したのだが、この宮田家だけは浮いた存在で、隣接するどの勢力も手を出さない。弄ってはいけない家柄のためだ。
 それで、呑気に先ほどの両家の争いを見物している。管領、これは家老のようなものだが、殿様の代わりに一切合切を任されている。
「村の米を買い集めております」
「そうか」
「さらに他国からも米を」
 これはそういった運送関係に人を置いているためだ。物の流れで、何となく分かる。
 さらに両家の城下に余所者が増えた。これは流民ではなく、武装している。足軽だろう。傭兵のことで、戦いのプロ。そのため村から出させた百姓兵よりも強い。ただ、金が掛かる。
 さらにスパイ、諜報員、これは忍者のようなものだが、その報告では、他国も動き出しているらしい。援軍とか、援助とかだろう。
 この両家、隣接する関係からトラブルが多く、領地も似たようなもので、対等の関係にあるから喧嘩する。力関係も似ていることから、もし戦いになると、互いに相当の被害を被ることになる。
 しかし、それぞれの城下には足軽が増え、荷駄がひっきりなしに入ってきた。
 あとは両家とも触れを出し、兵を集めることだが、各村は嫌がっていい返事はしない。
 住んでいるところは違うものの、どちらの領内にも親戚縁者が多くおり、村人同士は決して争っていない。
 しかし、お膳立てだけは進み、最高に盛り上がっている。そのため、両家とも引くに引けない。
 そこに現れたのが宮田家の管領。平田家と高砂家の殿様と会い、「まあまあ」とたしなめた。つまり仲裁に入った。この二人の殿様、最初から戦う気がなかったことが幸いした。両家とも主戦派の重臣が主導していただけなので、殿様の意志ではなかった。
 宮田家が間に入るにしては小さな存在なので、朝廷を動かした。しかし朝廷がわざわざ動くようなことはなく、有力大名が代わりに仲裁に入った。
 これで、事なきを得たのだが、そんなことをしなくても、肝心の領民が兵を出すのを渋っているので、戦いにはならなかっただろう。
 そういう動きは何となく城下の足軽達にも知れ渡ったのか、城下から引いていった。
 
   了

posted by 川崎ゆきお at 10:37| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする