2018年06月01日

3642話 紅孔雀


 時代が変わり、世相も変わり、状勢も違ってきているのだが、ある過去の年代のままの人もいる。そこで止まっているわけではないが、基盤となっている。
 その年代よりもいいものがあればいいのだが、それを越えなければ、引っ越す必要はない。悪くなるだけで、いいことはない。
 これは自分にとってだけ都合がよく、居心地がいいのだろう。それでは時が止まり、未来がないように思えるが、未来は刻一刻来ている。これは誰にも来ているので、敢えて言うほどのことではない。
 先に進みすぎたとき、これでは不都合が多くなり、それを修正するような未来を考えた場合、以前に戻すことが未来になる。しかし同じようには戻らず、永遠に戻らないため、戻すだけで生きている間の未来を使い切っても無理かもしれない。
 これは過去に生きていることになるのだが、未来とは過去によって発生する。未来だけがポツンとあるわけではなく、過去が未来を作っていく。
「まだ見ぬ国に住むという紅き翼の孔雀鳥ですか?」
「そうです。その孔雀鳥が宝の在処を知っているのです」
「お伽噺ですなあ」
「子供の頃、その話を知りました」
「ほう、それでその孔雀鳥を探し続けているわけですな」
「ご存じありませんか」
「まだ見ぬ国でしょ。そんな国などないでしょ」
「初めて見る国です。今の国家とは違います」
「お伽の国ですか」
「いえ、実在しているはず」
「そこへ行くのがあなたの目的ですかな」
「そうです。流石に大人になってからは、そんな夢のような話は消えたのですが、最近思い出しまして。僕が本当に踏み込みたいのは、そこだからです」
「そこはフィクションの世界でしょ」
「はあ」
「鬼ヶ島のようなもの。鬼もいないし、宝物もない」
「海賊のアジトだったかもしれませんよ」
「じゃ、紅き翼の孔雀鳥がいる国は何ですかな」
「宝のありかを知っている鳥です。ですから宝を得られます」
「財宝が目的ですかな」
「流石に金銀財宝があるとは思っていません。違う意味での宝物を得る手掛かりが得られるのです」
「その手掛かりとは?」
「まだ見に国が何処にあるかを探すところから始めないといけません。これがまずない。しかし僕が行っていない場所ならいくらでもありますから、適当に出掛けています」
「適当?」
「はい、そんな雰囲気のする、そんな匂いのする場所へ行くのです」
「ご苦労なことですなあ」
「いえいえ」
「そんなことでうつつを抜かしておられると、あなたの将来によくない」
「僕の将来は、そこにあるのです」
「申しても無駄なようですなあ」
「紅き翼の孔雀鳥が飛んでいる場所を探すことが大事です」
「大事も小事もありません。それ以前の問題でしょ」
「秘めし宝を知る孔雀鳥」
「あなたは子供に戻っておられる。そこにはあなたの未来ではない」
「紅孔雀が僕の未来です」
 
   了

posted by 川崎ゆきお at 10:56| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする