2018年06月09日

3650話 若手の反乱


「山田さんでしたか」
「そうです」
「じゃ、あちらの会議室でお待ちください。控え室になっています」
「あ、そう」
 次に来た増岡は個室に案内された。
 会議室に入るとき、山田はそれを見た。
 中に入ると何人かいる。いずれも後輩達。山田はその中ではトップ。しかし、いずれも若手。
 個室待遇と大部屋待遇。これは山田は分かりきっていることで、いつものことなのだが、少しは気になる。
 個室に入った増岡は一つ先輩。それほど変わらない。この業界は年功序列ではなく、業界に入った頃の順番で大凡のことが決まる。
 だから山田より若い西田というのが、個室待遇。上のグループ。中堅以上。ものすごく早く入ったためだ。実力は山田の方が上。さらに先ほどの増岡よりも上。力はあるのだが、入るのが遅かった。
 山田は若手のトップだが、メイングルーには入れてもらえない。
 会議室で若手達が雑談を始めているが、山田は馴染めない。山田よりも年かさの木村もいるが、入ったのが遅かっただけ。実力もさほどない。
 山田だけがここでは浮いてしまう。それで、同世代の増岡のところへ行く。
 増岡の控え室は当然個室。先ほど入って行くところを見たので、部屋は分かる。
 個室といってもちょっとした会議室だ。狭いが。
 いきなりドアを開け、入ってきた山田を見ても増岡は気にせず、本を読んでいた。二人はほぼ同期。中堅クラスの末席に引っかかったが、山田は届かなかった。しかし若手の中ではトップ。だが、もうそれほど若くはない。
 それに比べると増岡はメイングループに入っているが末席。増岡よりも年下はいるが、別格の実力者。
「上が一人欠けると、僕が入れるんだけどねえ」
「そうだね。充分その力はあるよ。僕よりも」
「そう。じゃ、代わろうか」
「勝手にはできないよ。君の方が若手相手だから気楽でいいんじゃない。実は僕はそちらの方でよかったんだ」
「この大勢ずっと続くんだろうねえ。僕と君との差は十位と十一位。でも君はピン差で先輩。しかし十位と十一位の間に段差がある。ここで分けられてしまう。その差は大きいよ」
「でもメイングループの末席は辛いよ。一番下なんだから。君なんてトップだよ。そちらの方がいいんじゃない」
「大部屋と個室の差。待遇が違う」
「まあ、上が一杯一杯だから、これ以上登れないよ」
「先輩達が年を取り過ぎた場合でも、僕らも似たように取り過ぎている。それほど変わらないからね」
「ああ」
 山田はメイングループのエースで年下の西田を連れ出し、若手グループの一部も引き連れて、新団体を作った。
 そのとき、メイングループの末席にいた増岡を誘ったのだが、自分がいると煙たがれると言って、そこに残った。
 中堅の西田が抜けたので、一人足りなくなり、若手グループから一人上げた。もし山田がいたら山田が入れただろう。しかし末席。
 山田グループは結局は反乱とみなされ、関連諸団体からは相手にされなかったため、自然消滅した。
 少しだけ気をよくしたのは増岡で、末席から一つ上になった。
 結局この団体はその後、時代から取り残されることになるのだが、若手は若手のまま終わっている。そして別の団体がそれに代わった。
 反乱を起こした山田達は解散したのだがが、何人かは新団体に吸収された。
 その頃、山田は実力者の西田の側近になり、強面のする存在として、今も活躍というより、暗躍している。本来の仕事より、こういうことが好きなのだ。
 
   了
 
posted by 川崎ゆきお at 10:00| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする