2018年06月10日

3651話 たっぷりの朝食


 朝から眠い。
 岸和田は毎朝食事を作っている。自分で決めた朝定食で、豆腐入り味噌汁、大根下ろしとチリメンジャコ、目玉焼き、野菜の煮物。これだけのものを作って食べているのだが、野菜の煮物は作り置きがある。
 小さく低い膳があり、時代劇や旅館のようだが、そこに乗せて食べる。足の付いたお盆のようなものだが、動かさない。小さなテーブルといってもいい。それだけに皿が多いと置く場所がなくなるが、いつもの朝定食ならいける。
 それをいつもののように食べているとき、ふと思い出した。一人で黙々と食べているときなど、ふと思うことがある。思い出しやすいのだろうか。厠のように。しかし過去の思い出とかではない。以前のことだが夕べのこと。
 夕食に惣菜を買って食べた。コロッケやマカロニサラダなど。スーパーの総菜売り場で声を掛けられた。半額にしますと。見るとスーパーのオバサン。すぐ横に作った物を売っているのだ。だからパックを手にすると温かい。コロッケもそうだった。
 そのオバサンが半額にしますと売り込んできた。何かと思うと焼きそば。弁当コーナーに焼きそばやお好み焼きが並んでいるのは知っていた。しかし、その日はご飯はあるのでおかずが欲しかった。しかし、半額にしますが効いた。時間が来れば半額になる店だが、まだそれには早い。それを早くしてあげるから買いませんかとセールス。
 ここの焼きそばは元々安いのは盛りが少ないことで、フルサイズの焼きそばではないらしい。
 そのとき岸和田はマカロニを買うところだった。コロッケだけでは何なので、もう一つ加えようとしていたのだ。しかし焼きそば半額につられた。
 買われるのなら今すぐ半額にしますと言われ、頷いてしまう。
 どれにしますか。と聞いてくる。そのため、焼きそばが置いてある台まで行く。そこで半額シールを貼るので、好きな焼きそばを言ってくださいと。選ぶも何もない。焼きそばパックが四つほど並び、どれも百円引きとなっている。時間帯的に見て百円引きではまだ客は手を出さない。半額シールが貼られるとさっと出す。しかし、それが貼られる時間は客も少なくなる。だから売れ残りを心配して誘ったのだろう。そのオバサンが横の厨房で作ったものに違いない。今日はこの売れ方では捨てないといけないと察したのか。自分が作ったものを自分で捨てるのは忍びない。捨てるために作ったようなもの。買われ、食べられてこそ作る喜びもある。それほど大層な焼きそばではなく、ありふれたものだが、しっかりと豚肉も入っている。
 そのエピソードのようなものを思い出したのではない。コロッケは二つ買ったが一つ残っていた。マカロニサラダは半分ほど。焼きそばを買ったのだから、マカロニは必要なかった。つまり余計なものを買ったので、食べ残した。
 それを思い出し、コロッケとマカロニを冷蔵庫から出してきた。すっかり忘れていたのだ。
 小さなお膳。あと二つは無理なので、マカロニのパックの中にコロッケを同居させることで、膳からはみ出すが、何とか乗った。
 いつもの朝メニューだけでも食べるのが一杯一杯なほど量がある。その上コロッケとマカロニが加わった。
 岸和田は全て食べた。
 それで朝から眠い。
 
   了



posted by 川崎ゆきお at 10:27| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする