2018年09月15日

3747話 表現者達


 いろいろなことをやっている人が集まる場所があり、誰でも自由に出入りできる。
 竹中は情報誌でそれを知り、そちらへ行く用事があるので、それが終わった後、寄ってみた。
 若い人から年配の人までいるが、若い人が多い。主催しているのは中年男で、髪の毛を後ろで括っている。バンダナはしていない。
 会場となっているのは画廊のようで、参加した人達の絵やオブジェなどがあり、また映像作品もあるのかスクリーンが垂らされている。上映は夜からとなっているので、竹中はその時間までいないので、見ることはできないが、DVD化したのが売られている。
 何かのサークルのようだが、ジャンルは多彩。映画の前にライブもあるらしく、これは歌だけではないようだ。
 そういったプログラムを見ていると、主催者らしき中年男が話しかけてきた。
「あなたはどんなことをされています」
「はあ」
「何をしている人ですか」
「あ、はい」
「いろいろな人が集まっています。紹介しますよ」
「いえいえ」
「何に興味をお持ちですか」
「特に」
「でも、参加しに来られたのでしょ」
「覗きに来ただけです」
「あ、そう。それはいいことです。お互い刺激しあってレベルを上げましょう」
「はい」
「ところで、あなたはどんな表現を」
「え」
「どんな創作を」
「いえいえ」
「物作りですか」
「さあ」
「さあ?」
「見に来ただけなので」
「そうなんですか」
 どうも何かをやっている人でないとここでは居心地が悪いらしい。
 長細いテーブルがあり、椅子もあり、空席があるので、竹中は座ることにした。
 横に座っているのは丸坊主の大男。しかし顔が幼く、人懐っこそうなので、話しかけてみた。
「坊主拳法家です」
「空手のような」
「少林寺です」
「まさかここで格闘技大会でも」
「ありません。だから間違いました」
「あ、そう」
「それに僕は型だけなのです。これはダンスのようなもので、パフォーマンス」
「じゃ、パフォーマー」
「まあ、そうです」
「じゃ、ライブに出られるのですか」
「いや、飛び入りは駄目なようです」
「あ、なるほど」
「あなたは何を」
「いえ」
「どんな表現をする人ですか」
「いえいえ」
 竹中はまた同じようなことを聞かれたが、答えようがない。特に芸はないためだ。
 これは場所を間違ったと思い、すぐに出た。
 
   了
 

posted by 川崎ゆきお at 10:21| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする