2018年09月28日

3760話 何か


 昨日と様子が違う。柴田が朝、目覚めたときの第一印象がそれ。これが一番に来るのかと思いながら、何が違うのかと考えてみた。朝からよく頭が回り、回転するものだ。きっと目覚めがよかったのだろう。いつもなら目覚めたときはまだもう少し眠っていたいというのが第一印象。しかし、印象でも何でもない。生理的なことだ。
 夏が終わり秋になり、空気が入れ替わったのではないかと思ったのだが、それほど変わらない。相変わらずの蒸し暑さが残っている。涼しさはあるものの、空気の違いは感じない。
 すると体調。調子が良いのかもしれない。しかし、それと印象とは違う。内部ではなく、外部の印象。だが、特に目立ったものはない。風が強いとかの自然現象でもない。そこではないことは何となく分かる。
 昨日と同じような朝の陽射し。天気も似ているので、起きたときの部屋の光線具合も同じで、これが目ですぐに分かる違い。しかしそれではない。
「誰かいるのか」
 これが柴田が下した解答。実際にはカマに近い。何者かにカマを掛けたのだ。
 反応はない。
 カマは外れたようだ。
 何かが違う。違和感だけがそこにある。
「僕として、目が覚めたのだろうか」
 この想像は度を超している。柴田として目を覚ましたのではなく、別の人物として目を覚ました可能性がある。しかし、それはあり得ないので、もう一人の柴田とチェンジしたのだろうか。
 多重人格。
 しかし、それは思い当たらない。人柄が変わりキャラが変われば見えるもの感じるものも違うはず。解答としては上手くいく。
 原因があるはずだと、昨日のことを思い出す。何か変わったことをしなかったかと。たとえばカーテンを変えたり、壁紙を貼っただけで随分と雰囲気が変わる。しかし、それも思い当たらない。もしそうならすぐに分かるはず。だから愚答。
 そうなると柴田に分からない変化があったのではないか。具体的なものなら目で見える。だから五感を超えたものの変化。
 ただ分かるのは何かが変わったことだけで、何がどう変わったのかの具体的なものまで絞り込めない。それ以上は感覚だけでは無理なようだ。
 そして、いつものように朝の支度をし、仕事先へ向かった。別段変化はないが、いつもの道だが、やはり気にし出すと、いつもとは違うように見えてくるので不思議。
 そして昼を過ぎたあたりで、そういうことは気にならなくなり、帰宅する頃にはすっかり忘れていた。
 そして寝る前、今日の一日について、ちょっと思い出したのだが、今朝の目覚めのあの一件は抜け落ちていた。
 
   了



posted by 川崎ゆきお at 10:56| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする