2018年10月13日

3775話 援軍


 戦国時代、領地を取り合っていた頃、そんな無茶ができるのは、中央に押さえの政権がなかったためだろう。
 黒川城主は気に入らないことがある。非常に戦闘的な人で、周辺の村々を取っていた。隣接勢力の領土だが、いつの間にか隣国の半分ほどを奪っていた。
 そこまでは順調。しかし、最近気に入らないことがある。それは隣国は弱いのだが、同盟国があり、それが駆けつけてくる。これが気に入らない。
 その同盟軍は大きな勢力ではなく、また遠いところから来る。複数の国を通過して、援軍に来ているのだ。
 まずはその同盟国を潰せばいいのだが、遠いし、敵対関係にある国を通らないといけない。だから遠征は無理。
「芦田家と同盟すれば如何でしょう」
 家臣が案を出す。
「どういうことじゃ」
「それで援軍に来なくなりましょう。同盟国同士が戦えば、同盟を破ることになりましょう」
「それはいい案。早速同盟しよう。隣国は既に領土の半分を失っておる。動員兵も少ない。これは簡単に落とせるのじゃ。芦田さえ来なければな」
「では、そのように計らいましょう」
 しかし、いっこうに同盟が成立しない。そのためにはプレゼントのような物が必要なことが分かった。馬でもいいし、砂金でもいい。茶道具や、立派な鎧でもいい。相手が喜ぶようなものを渡せば、何とかなるらしい。
「問題は芦田と同盟した場合、芦田家にどのようなよきことがあるかでしょうなあ」
 家臣は少しだけそのことを心配する。同盟の目的がモロのためだ。援軍に来るなというだけ。ここを見透かされていることが心配なのだ。
「芦田と同盟すれば、要請があればこちらも援軍を送る。芦田にとってもいいことではないか」
 しかし芦田領に行くためには、複数の国を通らないと行けない。だから実際には無理。
 そのことが分かっているのか、芦田は同盟を渋った。
 そして贈り物の効果も今一つで、芦田家に対し敵意はないという程度のもの。
 落ちかけの柿。隣国は既に落ちかかっている。簡単に落とせる。
 黒川領主は芦田からの援軍を心配しながらも、隣国へ攻め寄った。
 そのとき、急に芦田から使者が来て、貢ぎ物などを持ってきて、同盟してもいいと言いだした。当然これはもっけの幸い。いいタイミング。それで同盟は成立した。
 そして隣国に迫ったとき、芦田の旗印を見た。裏切られたのだと思ったのだが、そうではなく、芦田が先に城を落とし、領土にしてしまったのだ。
 同盟が成立したばかりなのに、すぐに破るのは体裁が悪い。聞こえも悪い。
 ということは、芦田は落ちかけの隣国に援軍に来た振りをして奪ったのだ。同盟を破ったのは芦田。
 黒川領主は芦田のずる賢さに呆れたが、こういう相手とは仲良くするのが得策と考え、その同盟は長く続けることにした。
 芦田家はその後、勢力を広げ、その度に黒川家も領地を増やした。
 
   了

 
posted by 川崎ゆきお at 10:59| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする