2018年11月07日

3798話 古いものを引っ張り出す

「そんな古いものを引っ張り出してどうするつもりかね」
「こちらの方が安定していますので」
「もう終わったものだ」
「だから安定しているのです」
「そんな古いもの、使い物にならん。だから古くなったんだ」
「古くからあるということですよ」
「しかし新しいものに取って代わられた。負けたのだよ。古いものが」
「でも、その新しいものもすぐに取って代わられるでしょ。それに最近、テンポが速いので、あっという間です」
「その都度新しいものに変えればよろしい。それなのに、そんな古いものを引っ張り出してくるなんて、どういうつもりだ」
「不安定なのです」
「だから新しいものに変えればいい」
「しかし、うんと古いものは、ものすごく安定しているのです」
「それは君の好みだろ」
「ちょっと年を取っていますが。その道の達人です」
「時代遅れの達人だ、何ともならん」
「ベテラン中のベテランで右に出るものは他にいません」
「右にも左にも、競争相手がいないだけだろ。そんな古いものなど誰も振り返りはしない」
「そこが穴なんです」
「穴。競馬か」
「大穴です」
「何という年寄りだ」
「博士と呼ばれています」
「そんな年寄り、役に立つのかね。時代遅れで使い物にならんことは目に見えておる」
「妖怪祓いができます」
「そんな方法で解決するような問題じゃない。それは古いんじゃなく、問題が全く違う」
「AIじゃできません。やはり人でないと。それに最近のソフトはバグが多いですし、新機能が加わるごとに買い換えなくてはいけません。さらに競合するソフトも多くありまして、選択だけでも大変です」
「うーん」
「ここはうんとレトロでアナログ的なものを導入する方がよろしいかと」
「そうまでいうのなら、その博士を連れてきなさい。で、名は何というのです」
「妖怪博士」
「聞いたことがない」
 担当者は妖怪博士に依頼したが、見当違いだと言われて断られた。
 この担当者、何か大きな誤解をしているようだ。
 
   了

posted by 川崎ゆきお at 11:39| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする