2018年11月18日

3810話 消えたファイルの謎


 吉岡は以前書いていた文章ファイルをたまに見直し、書き加えたり、修正したりする。いずれも完成していない文章。
 暇なときに、見直すのだが、そういうファイルが三つほどある。
 その暇なときがあったので、読み込もうとファイル一覧から探すが、ない。
 三つのうち一つがない。吉岡は多くの文章を書くので、似たようなファイル名になっている場合があり、用の終わったファイルは削除しているが、その三つのファイルは未完成なので、削除するはずがない。しかし消えている。間違って削除したのだろうか。
 すぐにゴミ箱を見るが、見付からない。更新順とか、削除時間順とかで調べてもない。ゴミ箱は一年ほど整理していない。ここになければお手上げだ。
 似通ったファイル名もあるのだが、ファイル一覧では更新順に並べているので、いつも同じ位置にその三つのファイルはあるはず。
 考えられるとすれば、新規ファイルを同じファイル名で保存した場合だ。そのとき、同名ファイルがあるといってくるのだが、確認しないで上書きしてしまったのかもしれない。
 残った二つのファイルは、ファイル名でも分かるし、開けば内容は分かるのだが、消えたファイルのファイル名や中身がどうしても思い出せない。
 三つのファイルとも、それほど長文ではない。消えたファイルも中身を覚えておれば、書き直すことができるが、手掛かりが何もない。頭の中の記憶からサルベージしないと出てこない。
 書きかけの三つの文章は、それほど大した内容ではない。消えても惜しくはないが、何を書こうとしていたのか程度は思い出したい。
 もしかして、パソコンの中に誰かが侵入したのだろうか。そのパソコンは古いので、テキスト打ち専用に使っていたノートだ。ネットに繋ぐようなことは先ずない。ファイルはカード経由でメインパソコンに送っている。
 だからネット経由で何かが入り込み、そのファイルを消した可能性はないし、そんな暇なことなど誰もしないだろう。
 もしそうだとしても削除された理由が分からない。きっと何者かにとって、その内容がいけなかったのだろうか。ネットからではなく、ウィルスでもなく、リアル人間がモロに消した可能性もある。そちらの方が怖い。
 読む人にとっては絶対に殺さなければならない事柄だったかもしれない。
 その何者かとは、何処にでも侵入できる魔物ようなものか。
 おかしいのは吉岡の記憶からも消えていること。だから機械の中のファイルだけではなく、頭の中の記憶箇所まで消し去ったのだ。
 そんなことがあってからしばらくして、写真を写したSDカードをパソコンで開いた。そこに文章ファイルが入っていた。写真ばかり見ていて、SDカード内にあるテキストファイルなど、最初から見ていなかったのだ。
 ファイル名は、書きかけのフィルだった。しかし、三つない。二つだ。あのファイルがやはりここにもない。そして更新日を見ると、二つともかなり古い。いつものSDカードが何処かへいったとき、カメラからSDカードを抜き出して、一時的に使ったのだろう。
 さらにしばらくしてから、ようやく合点がいく答えを見出した。
 書きかけのフィルは最初から二つだけだったことを。そして三つ目はなかったことを。
 だが、実は三つ目はあったのだ。しかしちょっと書いて、これは書けないと思い、保存もせずに閉じたのだ。
 三つあると思い込んでいたのはそのためだった。
 
   了


posted by 川崎ゆきお at 11:56| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする