2019年01月10日

3863話 ゲテモノ


「何が良いのか分かりませんねえ」
「価値の問題でしょ」
「ああ、価値の」
「価値は人によって違いますが、まあ、似たようなものでしょ」
「価値観も時代によって違うでしょ」
「一年でも変化しますよ。それに子供の頃の価値観と大人になってからでは違う」
「じゃ、価値は安定していないと」
「相場のようなものでしょ。しかし普遍の価値というのもあるようですが、価値の賞味期限が長いのでしょうなあ」
「最近私は思うのですが、さりげなくやったことがもの凄く価値のあることだったりしましてね。逆に狙い撃ったように、これは値打ちものだと思い、やったことがそれほどでもなかったりします」
「価値に飽きているのでしょうねえ。定番過ぎると」
「そうじゃなく、価値があるかどうかも分からない状態でさりげなくやったことが意外といけたりします。でも柳の下にはもうドジョウはいない」
「それは値打ちがあると思い、狙い撃ちしたからでしょ」
「似たようなことをしたのですがね。あまり価値はなかった。すると、一時だけの価値だったのかもしれません」
「さりげなさというのはいいポイントですねえ。しかし、次からはさりげなくはできない。ここでしょうねえ」
「やはり定番物の価値あるものをやる方が無難ですか」
「しかし、一寸違うものが欲しい。あまり注目されていないが、価値のあるもの」
「価値を掘り起こすわけですね」
「見出すわけです」
「やはり、それも狙ってやるわけですから、さりげなくとは一寸違いますねえ」
「さりげなくに拘りますねえ」
「簡単にさっとやってしまえるからですよ」
「それは本当にさりげなくですか? 価値を意識しないで」
「はい」
「何処かで値打ちものだと思っているのでは」
「そうでしょうねえ。何か良さそうな感じがしましたので、きっとそうでしょう」
「わざとらしいさりげなさもありますねえ」
「それじゃさりげなさじゃないでしょ」
「このあたりが臭いと思い、さりげなく掘るとか」
「それはあります。時期的に、ここが痒いので、掻くような感じです。それと、最近ご無沙汰なので、たまにはやってみようとかも」
「要するに正面からではなく、違うところから攻めるわけですね」
「攻める気はありませんが、気が向くのでしょうねえ」
「それはマニュアル化するのは難しいです」
「マニュアルというのは既にあることを繰り返す手順のようなものでしょ」
「そうです」
「まだ価値がはっきりとしない先物買いが私の好みです」
「それには冒険が必要なのです」
「そうです。道が付いていないわけです。行き止まりだったりします」
「しかし、普遍性の高い価値観が安定しているものの方がいいですよ」
「でも飽きません?」
「飽きます」
「あまり価値がないとされているものを、もう一度見直すのも悪くないですよ」
「悪くはないですが、良くもないでしょ」
「もう既に誰もが放置したようなもの、見向きもしないようなものの中に、何かありそうな気がします」
「復活ですなあ」
「そうです。今このタイミングなら、いけそうなものがありますよ」
「たとえば?」
「それは業務秘密です」
「ないのでしょ」
「まあ、そうですが、見付けておれば、こういう話もしませんよ」
「なるほど」
「長く封印されていたものとか」
「それが、例ですか」
「そうです。または考え方としては、既に終わっている思想とかです」
「要するにゲテモノ食いでしょ」
「下手に出て、下手投げを食らわすのです」
「僕は上手投げが好きだなあ」
「あ、そう」
 
   了


posted by 川崎ゆきお at 12:01| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする