2019年02月10日

3894話 梅と雨


 雪にならずに雨になる。真冬、この雨を梅雨とは言わないが、この時期梅の花が咲く。それに実が成る頃が梅雨。さらに長雨にならないと、梅雨とは言えないが、冬に咲く梅と縁遠いわけではない。また梅雨時はジメジメと湿気が多いため物が腐りやすい。梅の実は食中りにもいいはず。殺菌作用があるかどうかは分からないが、腹がおかしくなったとき、梅干しをなめたりする。梅毒というのもあるが、これは梅の毒ではない。
 梅雨は色々なものが湧き出す季節で、目には見えないが微少なものが元気に活躍している。
 冬時の梅の花と雨。次の関係は実になってからだが、その間春が長く続く。それに水を差すのが梅雨。
 しかし、ここで色々なバイ菌が活気づくように、夏前の暖かさと湿気が人にも影響するはず。
 梅雨の花は紫陽花。春の雨は菜の花。春の長雨は菜種梅雨。ここでも、まだ梅がある。まあ、低気圧が停滞し、雨が降り続くことを梅雨というのだろうか。もうあの梅とは関係はなくなるが。ツユと言える。分解すると汁や水分となる。まあ、空から汁が降ってくるとは言わないが。水分が多いのでツユとして使ってもいい。おつゆが多いとかになると、分泌物のように聞こえる。雨といえばひと言で済む。あまり誤解はない。
 下田は梅雨時になると活気づく。ナメクジやミミズのような男だ。名字は下田ではなく、蛭田の方が似合っている。何故か湿気に強く、さらにそれを好む。両生類時代を懐かしんでいるのかもしれない。
 雨の中、梅雨ではないが、梅の花を見に来ている。このところ雨が多い。この時期の長雨をどういうのだろうかと考えているようだが、ふさわしい言葉が下田の辞書にはない。本来なら雪が降っている季節。
 湿気を好む下田は雨を好む。そのため、天気の悪い日を選んで梅園へ来た。桜の花見よりも、梅の花見の方を好んだ。
 冬の乾燥した空気で苦しかったのだが、この雨で潤いを得て、元気になったようだ。魚人ではない。
 人とは体質が異なるのか、単なる好みの問題かもしれないが、雨が好き。
 雨の日の梅。それは季節の先取り。雪にならずに良かったと、黒光りのする枝に流れる滴を見て、いい艶だと愛でる。花だけではなく、梅のカクカクとした枝振りこそ梅の真骨頂。梅の丸い蕾など、さらにいい。
 雨で梅園に人出はない。梅の香りと湿気を大きく吸い込み、下田は満足を得たようだ。
 
   了



posted by 川崎ゆきお at 12:24| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする