2019年02月27日

3911話 援軍部隊


 戦場へ向かう長い隊列が続いている。道が狭いこともあるが、各隊の動きがバラバラで、隊と隊の間がかなり離れていたりする。こんなとき、奇襲を掛けられると、横腹を突かれ、所謂中入りされて兵は多くても、その腹の箇所は手薄だったりする。義経が使った奇襲がそんな感じで、信長の桶狭間もそうだったと言われているが、違うかもしれない。
 行軍の前方近くで何やら人の出入りがある。周辺は伏兵が潜みそうな場所はない。こういうのは既に偵察隊が調べているので、奇襲ではない。
「ない」
「はい」
「ないわけがない」
「それがなくなりました」
「引っ捕らえろ」
「既に追わしています」
「罪は問うな。戻せば助けると、伝えろ」
「はい」
 行列の後方で、それが起こったようだ。
 最後尾は荷物を担いだ荷駄部隊が続いている。道が悪いので、担がないといけない。荷車が通れないのだ。
 しかし、荷車は簡単な板と車輪の組み立て式を持ち込んでいる。車輪を抜き、荷台だけを神輿のように担ぐ。それも無理な坂などでは荷を分けて背負うしかないが。
 騒ぎはこの荷駄隊で起こった。米俵を担いでいた隊が消えてしまった。荷車が使えないので、それを担ぎながらついてきていたのだが、流石に重いので、遅れ出す。しかし、この行軍は急がないといけない。援軍のためだが数日かかる。その間の食べ物がなくなったのと同じ。途中に村はない。
 つまり一番早い道を選んだため、近道だが村さえないような道筋なのだ。その道も頼りないもので、途中で消えていたりする。
「食い詰め者に米俵を背負わせれば、持ち逃げするじゃろ」
「はい」
 軍を仕切っている年寄りが、さもあらんというよような顔をする。
「荷を背負ったままそう遠くへまでは行けまい」
 腰弁当というのがあり、二日ほどは凌げる。それが尽きたとき、腹ぺこで敵と遭遇する距離に入る。「敵の仕業ではないでしょうか」
「矢はどうじゃ」
「はい、矢の荷は無事です」
「じゃ、敵じゃない」
「そうですか」
「誰が雇った」
「さあ、分かりませんが、荷駄奉行に聞いてみなければ」
「まあいい。取り戻せば罪は問わん」
「はい、すぐにでも見付かると思います」
 急ぎの行軍なので、兵を進めながら、かなりの兵を抜いて、探索に当たらせた。
 これはすぐに分かった。
 狼煙が上がった。
 盗人を発見した合図ではない。ご飯を炊いていたのだろう。
 罪を問わなかったのは、今度は運ぶ人足が足りなくなるためだ。
 彼らは既に白いご飯を食べている。ついでなので、オムスビを山盛り作って、行軍中の兵に配った。
 この部隊。そんなことはあったが、戦場に間に合い、救援に駆けつけたということだけを示すような戦い方だった。敵は援軍が来たことを知り引いた。
 
   了



posted by 川崎ゆきお at 12:11| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする