2019年05月28日

3401話 暑い日


「暑くなりましたなあ」
「出ましたね」
「え、何が」
「そろそろ、それを言い出す時期なので」
「よくご存じで」
「去年も、そう言ってましたから」
「いや、今年は去年より暑い」
「そうですか」
「今年の冬は暖かかった。だから夏は逆に涼しいと思っていた」
「それはどういう思いですか」
「冬暖かければ夏涼し」
「それは何ですか」
「私が考えたものです」
「あ、そう」
「しかし、それに反する今日この頃の暑さだ。まだ梅雨前なのに」
「そういえば、今日は真夏並みかと」
「そうでしょ。だから暑いと言って当然。それでもまだ早いと思い我慢していたのです」
「我慢?」
「黙っていたのです」
「そんなこと、黙っていなくても」
「タイミングがあります。同意の得やすい」
「今日はグッドタイミングでしょ。文句なく暑い」
「ご同意、有り難うございます」
「当然ですよ。わけないこと。難しい同意じゃない」
「その難しい方の同意も頂ければ有り難いのですが」
「それとこれとは別」
「で、しょうね。しかし、一つでも同意すれば、何となく流れが良くなります」
「まあ、あなたの要望は分かりますがね。それをすると色々と無理が出ます。だから同意はできないのですよ。あしからず」
「どうあっても無理ですかな」
「無理なことは無理」
「意見の相違では仕方がありません。しかし、それでも同意するのが世の中ですよ。ここで呑んでもらわないと、私は二度と同意を求めなくなりますよ。ここまでですよ」
「何か、脅しています?」
「脅していません」
「まあ、あなたとは考え方が根本的に違うのです」
「でも今日は暑い、なら同意したじゃありませんか」
「それは考えじゃないし、意見でもない。そのままでしょ」
「要するに考えや意見が邪魔立てしておるわけですな」
「まあ」
「不届きな輩ですなあ。その考えや意見とかは邪魔ばかりする」
「まあ、そんなものですよ」
「それを取っ払ってもらえませんか。するとすんなり事が運ぶのですが」
「考えておきましょう」
「ほら、また考える。それがいけない」
「まあ、あなたとは意見が合わない。考え方がまるで違う。だから根本的に無理なのです」
「それも意見ですかな。そんな考え方も」
「まあ、そうです」
「意見の意見、考え方そのものの考え方を考えられては如何です。あ、また考えてしまうことになりますが」
「そうでしょ。どちらにしても考えが合わなければそれまでですよ」
「分かりました」
「ご了承下さい」
「いえいえ、また時期を見てお願いしますよ」
「何度来られても同じです」
「いやいや、人というのは何かの拍子で、コロッと考えなんて変わるものですよ」
「あ、そう」
「今回はここで引き下がりますが、次回を楽しみにしています」
「あなたもそのしつこい考え方、変えた方がいいですよ」
「はい、お互いに」
「しかし、今日は暑いですねえ」
「ほんとほんと。暑い暑い」
 
   了



posted by 川崎ゆきお at 10:57| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする