2019年06月09日

3413話 納豆の糸


 暑い日だった。急に暑くなった。いきなり夏になったようだ。朝から暑い。
 吉岡はいつものように昼寝をしていたのだが、よく眠れる。途中で目が覚めたが、寝たりないというより、また眠りに落ちようとしているのが分かる。それをどうすることもできない。無理に起きてもいいのだが、その理由もない。スケジュール的な問題もないためだ。
 真夏の昼寝。これはそれほど眠れない。うとっとなる程度で終わる。暑くて寝てられない。それなのにまだまだ眠れる。これはおかしい。きっと暑気で朦朧としているのでないか。本来の眠気ではない。そしていつもよりも昼寝の時間が長すぎる。この時期短いか、眠りにさえ落ちないか、どちらか。横になっているだけの日も多い。
 これは危険だと感じ、吉岡は強引に起きた。納豆のような眠りの糸を引っ張っているが、それを切って。
 起きてすぐにネットで気温を調べると、全国的に高温。確かに気温はこれまでよりも高いが、真夏の凄い暑さではない。
 しかし、朝からグンと気温が高いことは分かっていた。この調子では昼頃、凄く暑くなるはず。しかし、昼寝するとき、それほどでもなかった。
 春から徐々に暖かくなり、身体もそれに慣れてきており、さらに初夏で暖かい、から暑いに変わってきたのだが、それにも慣れたはずだが、今朝の暑さはその慣れを超えたものらしい。だからいきなり夏に襲われたようなもの。
 吉岡はいつものように昼寝を終えると散歩に出る。部屋にいるよりも涼しいかもしれないと思ったのだが、逆だろう。夜なら外の方が涼しいかもしれないが、昼間は日影の方が涼しい。陽射しがないだけ。
 ドアを開けると、むっとする空気が、ということもなく、室内とそれほど気温は変わらない。しかし、いつもよりも暑いのは確か。
 いつもの散歩道を歩いていると、人もいつものように出ている。行き交う人や自転車、車。いつもと変わらない。特に異変はない。外に出られないほどの高温ではない。そんな日でも出ている人はいるだろう。
 散歩コースは緑の多い通りで、炎天下を歩いているわけではない。そしていつもの距離を歩き、戻ってきた。
 そして夕方まで仕事を続けたのだが、その頃はもう普段と変わらない。
 気温を見ると、下がりだしたようだ。そして夕方になると、涼しいほどに。これは季節としては妥当。
 翌日もまた暑くなったが、その日は窓を大きく開けての昼寝。閉めていた窓が別にあり、そちらも開け、部屋と部屋との仕切りも全部開けた。
 そして仕舞い込んでいた扇風機を取り付けた。
 その状態で吉岡は眠りに落ちようとした。暑いが意外とすんなりと眠れるようだと感じながら。
 そして普通に昼寝から目が覚めた。眠りも納豆のような糸は引かなかった。
 
   了

 
posted by 川崎ゆきお at 10:46| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする