2019年06月12日

3416話 自家中毒


 毎日通る駅までの道。藤田は二十分ほど歩いている。家賃が安いだけあり、駅から遠い。バス停が近くにあるが、いつ来るか分からないし、朝は満員で乗りたくない。駅まで歩いた方が結果的には早い。これまでは自転車で駅に出たのだが、取り締まりが厳しく、もう止められなくなった。
 それはいい。日常化してしまうと、徒歩距離の二十分も普通になる。急げば十五分、走れば十分ほどで着くだろうか。しかし朝から汗をかきたくないので、二十分コースとなる。これで普通だろう。特に早足でもなく、遅くもない。どちらかといえば同じように駅に向かっている人よりも遅い目かもしれない。追い越していく人が結構いる。藤田が追い越すとすれば年寄り程度だろう。
 だが、そういう問題ではない。どうも足が重い。それでもペースは同じ。だから少し重い程度で支障はないのだが、足の重さは気の重さ。気から来ているのだろう。思い当たることはない。仕事先で面倒なことがあったとかもない。ささっと仕事し、ささっと終える。もう要領を覚えたので、仕事は簡単にこなせる。軽く流せる。
 日々問題はなく、平穏なもの。だから、気の重くなるようなことではない。なのに足が重い。何か苛つきのようなものさえ感じる。急に走り出したいとか。
 ほとんどガタンゴトンもいわないようなレールの上を走る電車のような日々。そのため、ストレスも少ない。そうなるのを避ける術を身に付けているためだろう。
 しかし、足が重く気も重い。理由が分からない。体調も悪くはない。だから気の問題。
 あたりまえのことをあたりまえのように粛々とやる。このあたりまえが何故か気に入らなくなってきたのだろうか。
 こういうのは長い休暇などのとき、退屈が続くと起こることがある。それに近い。
 これはまずい。コントロールが足りないのだ。
 では、何を弄ればいい。
 既に完璧だ。
 それ以上考えなくても藤田には分かった。
 こういうときは無理をせず、休むことだろう。そのための有給も残している。滅多に病欠はないので、これは簡単に使える。
 藤田はその場で電話した。
 しかし、一体何が起こり、どのようなことが無理となるのかは分からない。ただこの状態で出ると大変なことをしでかしそうなのだ。その予感だけが脳裡から伝わった。
 
   了


posted by 川崎ゆきお at 11:10| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする