2019年06月17日

3421話 妖怪堂


「妖怪堂?」
「はい」
「妖怪堂」
「そうです。妖怪博士」
「もう飽きた」
「いえいえ」
「寺とか神社とかお堂とか、ややこしい村があるとか、幽霊が出る屋敷があるとか、そういうのばかりじゃないか」
「そういう世界ですから」
「どうせ村にある面倒くさそうなお堂じゃろ」
「一応」
「そこに妖怪が出ると?」
「そうですそうです。幽霊ではなく妖怪です」
「もうお堂や祠や、そういったものはもういい。それと古墳のような塚もな」
「そうおっしゃらず、今回は妖怪堂なので、そのものズバリなので」
「遠いのか」
「近いですが、少し郊外です。私鉄で行けます」
「うーん」
「軽く調べて貰えばいいのですが」
「低気圧が」
「梅雨ですからね」
「それで、頭が痛いし、それに雨。出掛けたくない」
「妖怪が大勢います」
「で、どういう話なんじゃ」
「妖怪のお堂があるのです」
「そんな勝手なことを」
「はい、その通りです。実は閻魔堂でした」
「珍しいが、閻魔堂がある村は結構多い。村の入口のさらに手前ぐらいにある。村と外との境界線あたりかな」
「そうです。村の外れというより、もう村から出ています」
「そうじゃろ。これは村人の信仰のためじゃなく、脅しだ」
「閻魔さんですからね」
「鬼瓦のようなもの。家ではなく村に取り付けたようなもの。これで、威嚇するわけじゃ」
「そうなんですか」
「悪さをしに、村に入り込もうとしても、その手前に閻魔堂があると、一寸躊躇する。まあ、もしあの世にいったとき、悪事は裁かれるのでな」
「そんな効果があったのですか」
「マジナイに近い。個人の家ではなく、村単位の守り」
「村のいいところにある神社とは違うわけですね」
「村人相手ではなく、外来者相手」
「じゃ、そういう含みで、行きましょう」
「しかし、閻魔堂がなぜ妖怪堂に。それに妖怪堂というのも、世の中にないわけではない。閻魔堂ほど有名ではないがな。これがあるのは街道筋のように人が多く通る場所じゃ」
「その妖怪堂は結構古いのです。閻魔さんもいますが、妖怪の絵や置物などがびっしり入っています」
「大きさは」
「お堂といっても板床はなく、屋根と囲み程度。一応閻魔さんが座る台はありますが、まあ、物置のような感じです」
「人は入れるか」
「入れますが、狭いです。それに色々なものを起きすぎたので、数人入ると一杯です。壁には妖怪の絵が飾ってありますし、土間には妖怪の木乃伊とか置物のようなものとか」
「秘宝館か」
「それが江戸時代から続いていまして、今は閻魔さんはいませんが、妖怪の絵が壁から天井までびっしりと貼られています」
「どの時代の絵かね」
「さあ、江戸時代のものはもうありませんが、今は浮世絵の妖怪画の複製とか、本やグラビア雑誌から切り取ったものがペーストされています」
「それだけのことじゃないか」
「ここに出るのです。本物の妖怪がお堂に集まるのです」
「もう分かった」
「では調査を」
「だからそれは人じゃろ」
「よくご存じで」
「想像が付く」
「はい」
「だから、その手には乗らんので、私は行かない」
「そうなんですか」
「何処に神秘がある」
「はあ」
「もっといい話を持ってきなさい」
「しかし、特集を考えているのです。次の号で」
「じゃ、適当に行ったこととして書くから、それでいいじゃろ」
「そうですね。僕も行くのが面倒でした。そんなのに付き合うのも邪魔臭いですしね」
 編集者は資料を置いて帰った。
 妖怪博士はそれを見ていると、見たことのある妖怪画が写っていた。
 最初それを見たとき、妙な気になったが、すぐに分かったとき、頭からしゅーんと血が引いた。
 妖怪博士が妖怪の中に混ざっているのだ。よく見ると、雑誌などでよく使われている妖怪博士の写真。それを拡大していた。
 もしかして、殿堂入りしたのかもしれない。
 
   了




posted by 川崎ゆきお at 10:33| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする