2019年07月14日

3448話 寝る前


 夜も深まっている。まだ寝る時間ではないが、この時間帯には既に眠りに入っている人も多いだろう。田中は夜更かしが日常化しているので、その夜も普段通りで、今布団に入ると逆に早寝となる。だから遅い時間帯だが決して夜更かしだとは思わない。
 いつもの寝る時間を過ぎてもまだ起きていると、これは夜更かしになり、そろそろ寝ないといけないと思うだろう。翌朝いつもの時間に目が覚めたとしても、夜更かし分睡眠不足になる。睡眠がわずかでも足りないと、その日はコンディションが変わる。一日眠いわけではないが、何かすっきりとしない。
 その夜も、もう遅いので、わずかな時間しか残っていない。当然用事のようなものは夕食を食べてからはもうしない。寛いでいるだけ。
 そして寛ぐのにも疲れてきた深い時間帯、ここが好きなようで、一日が完全に終わる直前。しかし、まだ間がある。もう別のことをして過ごすという気もなく、聴いていた音楽も止め、ぼんやりとネットを閲覧している。いつも決まって見るコースがあり、そこを見て回るのだが、チェックしている程度。場合によっては同じサイトを何度も見たりしている。朝見たときと同じのをまた見たりする。そういうサイトは一日一度更新される程度で、場合によっては一週間ほど変化がない場合もある。ニュースなどはよく更新されるが、見出しを見るだけで、本文まで読む記事はめったにない。
 だから見るといっても瞬間、そのほとんどは前回見たときと変わっていなかったりする。何かの目的があって見ていたのだが、今はチェックするだけのものが多い。実は立ち止まりたくないのだろう。変化がないことを確認しに行くようなもの。また変化がないから行くようなもの。見て回るだけでいい。しかし、実際には見ていないのに等しい。
 また、この時間から映画やドラマを見るには重すぎるし、またそんな時間もない。それこそ夜更かしになる。
 もう寝る前のわずかな時間帯。田中はここが好きだ。特に変化のない一日でも、それが終わろうとしている。もうすることは残っていない。なので何もしたくない。その日、一日する用事は終わったのだから。
 これは大晦日に一年を振り返るほど大層なものではないが、それに近い。
 こういうとき、昔のことが頭をよぎる。特に昔関係した人々だ。それらの人達は今どうなっているのだろうかもあるが、ただ思い出していることのほうが多い。それらのキャラが自動的に立ち上がり、まるでドラマのワンシーンのように蘇る。
 その中でも、遠に忘れてしまい、思い出すこともなかったようなキャラが起き上がってくることがある。まるでゾンビだ。
 このチャンネルは自動選択のようで、何が来るのかは分からない。
 プライベートな時間帯とはこのことだろう。自分にしか分からない世界。誰かと共有しているのだが、もうその機会がなかったりする。つまり「あの頃はああだった」「そうそうそうだった」とあとで一緒に思い出すような。
 これは立ち上がってくるキャラによりジャンルが異なる。不快な思いをした人達を思い出すと、胸くそが未だに悪い。嫌なものが立ち上がったと後悔するが、自発的に思い出したわけではないので、後悔も何もないのだが。それはすぐに止める。
 当然過ぎ去った過去だけではなく、先への思いも出てくる。そういうのが回り出すともうそろそろ布団に入る時間。結構しみじみとなったあたりがいい頃合い。これはいいものを思い出したときだが。
 寝る前のわずかなこの時間、田中はいつも小さな自分に戻るようだ。
 
   了



posted by 川崎ゆきお at 10:44| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする