2019年09月07日

3503話 新秋


 新しい秋を頂いた田中だが、まだ夏の気分でいる。その夏とは汗をかきながら働いていた夏ではなく、休んでいた夏。しかし、汗はかくが。
 涼しくなり、過ごしやすくなったのだが、何をして過ごすかだ。食べて寐るだけの過ごし方だが、これはベースだろう。食が進まず、寝付きも悪く、しかも熟睡できないで、早い目に目を覚まし、寝不足状態のまま一日を送る。一日の中身よりも、こちらのほうが大事かもしれない。ただし、それは最低条件。ただこれを満たしていない人も結構いるだろう。
 田中はその面に関しては合格だが、何処に出しても恥ずかしくないような事柄ではない。快眠快便など、履歴書に自己PRとして書けないだろう。やってきたことではなく、ただの生理現象なのだから。だが、ここがしっかりしていないと、本来の仕事に影響が出る。ただ、出ない人もいる。どんなコンディションでも仕事をこなす人も。
 田中は健康に努めているわけではない。仕事をしていないので、プレッシャーやストレスが少ないためだろう。
 そういうことを理由に、この夏も、休んでいた。暑いので、この時期は何もできないから。これも言い訳だろう。
 しかし、涼しくなってからもまだ休んでいる。夏場遊んで暮らしていたキリギリスでも秋になると働き出す時期。ただ、その時期から働いても、遅かったりしそうだが。
 それで、涼しい日が続き、淋しくなってきた頃、暑い日が戻った。これはよくあることで、夏が戻ったような暑さ。
 田中は喜んだ。そして暑いのに、外に出た。そこに夏があるためだ。
 山がそこにあるので登るように、夏があるので、外に出たようなもの。登らないが、陽射しの下、炎天下に出たいと思ったのだ。これを逃がすと、もう今年の夏はこれっきりで終わる。最後の真夏を惜しむように。
 夏の日々は休んでおり、外に出ることは希。暑いので、最低限の外出しかしないのに、この日は用もないのに、炎天下に出た。
 これで、もう結果が分かるようなもので、当然のことのように暑さにやられた。
 田中が回復したのは中秋。本当は二三日で治っていたのだが、引っ張った。
 そして涼しいからひんやりする気候になったためか、少しはやる気が起こり、活動期に入った。
 
   了





posted by 川崎ゆきお at 10:19| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする