2019年10月25日

3551話 夢の中の友人


 夢の中でよく出てくる人物がいる。吉田の古い友人で、年を取ってからはその関係も消えたが、それほど遠くには住んでいないためか、たまに出くわす。
 吉田がまだ十代の頃に知り合っている。年はほぼ同じなので、目上目下の関係はない。同じような仕事をしていたが、どちらも既に辞めている。そういう年というより、長くやれるような職ではなかった。だから、その後、違う職に二人は就いているが、まだ付き合いは続いていた。
 その友人を最近見かけない。しかし、夢の中での登場頻度は高く、また出てきたのかと思うほど。
 その日も朝方の夢で現れた。チャイムが鳴ったので、玄関まで出てみると、彼がいる。これは夢の中での話。来るのは分かっていたのだろう。そして彼は青年時代のまま。おそらく吉田は今の年代のままだろう。そして見知らぬ子供を連れてきている。
 このパターンは現実にはなかった。複数で会うことはあっても、見知らぬ顔は混ざっていない。そんなシーンを探すと、一つだけあった。それは吉田が連れてきた初対面の人間だ。しかし、その友人は一度もそんな人を連れてきたことはない。ましてや連れてきているのが小学生。これはあり得ない。
「ご飯」
 友人の第一声はそれだ。とりあえず、近くの店屋でご飯を食べたいと言いだした。すぐに近くに喫茶店があり、そこでランチものもやっているので、そこへ行くしかない。
 夢はそこまで。これで終わっている。
 その友人、ここ数年見かけなくなったので、引っ越したのかもしれない。年賀状のやり取りなどは最初からなかったし、今はもう電話番号も忘れている。何度か変わるためだろう。いずれも家電話だ。
 そして最後に合ったときは健康状態が悪いと言っていた。それが気になる。だから入院でもしているのだろう。それにしても長すぎる。
 友人が夢の中で頻繁に現れるのは珍しいことではない。いつものことだ。その夢を見る度に、懐かしく思う程度。
 しかし、今回。小学生を連れてきている。これが妙なので、その顔を思い出そうとした。誰かに似ているとは思っていたのだが、該当する子供がいない。
 それで、やっと思い出したのは、その友人ではなかったかと。だから大人になったその友人と、まだ小学生時代のその友達が揃って来ていたのだ。
 吉田は彼の小学校時代を知らない。しかし、何となく似ていた。
 その友達は結婚していない。だから息子ではない。
 吉田はそこまで考えたのだが、所詮は夢の中での話。どうとでも解釈できるし、解答もない。
 その友人、生きているのか死んでいるのか分からないのだが、調べるのが怖いので、吉田はそのままにしている。
 
   了



posted by 川崎ゆきお at 11:59| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする