2019年11月15日

3572話 風邪で休んだ日


 風邪でも引いたのか岸和田はその日に大事を取って仕事を休んだ。軽い風邪程度で休めるのだから、いい仕事だが、仕事は出来高なので、休めるだけ休めるが、月末の収入にもろに響く。ご飯はいいが、おかずが貧弱になる。海老の天麩羅がちくわの天麩羅になり、トンカツがコロッケになる。しかし肉は僅かながら入っている。しかも牛肉だ。実際にそれが肉であるかどうかは舌先では分からない。ミンチ状なので、歯応えはないが、歯の隙間にかろうじて挟まったとき、肉を感じる。
 しかし、一日休んだぐらいでは、それほど収入に響かないものの、月々の収入ではいつも不足気味。
 風邪の引き始め、無理をしてこじらせると長引く。そうなると、さらに仕事ができない。だから、ここで一日休むのは理にかなっている。それ以前に一日のんびりと過ごしたかったのだろう。
 額に手を当てると、少し熱がある。体温計の数値は平熱。しかし、額はいつもよりも熱い。熱っぽいということだろう。
 それで午前中はテレビを見たり、音楽を聴いたりして過ごした。
 昼は軽くうどんを作る。具は何もない。休んだ分、収入が減るので、既にそれを計算しているのだ。それに食欲がない。熱っぽいためだろう。だからうどんで十分。残すほどだ。
 うどんの食べ残しほど始末の悪いものはない。ご飯なら電気炊飯器に戻せば済むが、うどんは何ともならない。それにあとでまた食べたいと思うほどのものではない。
 熱いものを食べたのか、鼻水が出てきた。これも風邪の諸症状かもしれない。いつもより量が多い。
 そのあと昼寝をし、起きると額も熱くはなく、身体も軽くなっていた。
 これで、治ったのかもしれない思い、外に出た。油断大敵だが、大丈夫な気がした。気持ちが回復したのは身体が回復したためだろう。身体が先で、気持ちはあと。だから、無理な動きではないので、散歩に出た。
 部屋の中に籠もっていると閉塞感があるため、外に出ることにしている。少し家から離れると不特定多数の人達を見かけることになる。自分以外にも生きている人がいるというようなゾンビで占領された町ではないが、見知らぬ人達を見るのが好きなのだ。家の近くだと顔見知りが多いので、少しだけ足を伸ばす。
 さて、こういうときに妙な人と遭遇したり、妙なことに出合ったりするものだが、その日は平穏無事で、何事も起こることなく部屋に戻れた。
 だが、ドアを開けて一歩中に入ったところまでは戻れたのだが、その先だ。
 何かいる。
 
   了



posted by 川崎ゆきお at 11:34| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする