2019年11月19日

3576話 四方への散歩


 寒くなってきたためか、村瀬は散歩に出るのが億劫になってきた。散歩は村瀬のメインの日課で、一日三回か四回、多い日には五回も六回も出ている。戻ってきて、またすぐに出る。一日中散歩しているので、家には休憩で戻ってくるようなものかもしれない。
 当然家の近くを歩いている。東西南北、これだけで四コースできる。北へ向かうコースと西へ向かうコースが隣り合わせになることもあるが、それは余程近い場所。遠くまで行くと、末広がりに拡がるため、多少左右に道を変えても、重なることはない。
 北へ行くと淋しくなり、南へ行くと賑やかなところに行く。東西はそれほど変化はないが、さらに行くと川にぶつかる。東西どちらへ進んでも川がある。別の川だ。そのため、村瀬の住む場所は、川と川とに挟まれた場所にある。それなりに大きな河川で、ここまで行くと、かなり遠くまで来た感じになるので、土手の下で引き返す。それよりも直進ではなく、左右に振る方が多い。それでより細かく見て回れる。散歩は道を行くため、これは線に沿っていくようなもので、前や左右には進むが、後ろへは行かない。これは戻るときだ。ただ、同じ道を戻らないので、左左と二回曲がれば、戻ることになる。
 この三回か四回の散歩は朝から夕方にかけてだが、最終の散歩は夜になる。この最終便、最近寒くなり、億劫になり出した。コースは日替わりで、東西南北の中の一本を選ぶ。
 ただ、暗くて寒いので、それほど遠出はしない。
 この東西南北のコース沿いに喫茶店や食堂やファスト系の店があるので、朝食は喫茶店などのモーニングサービスで済ませたりする。昼も喫茶店のランチとか、ファミレスとか、牛丼屋やうどん屋などに入ったりするが、コンビニで弁当を買い、戻ってから食べることもあるし、スーパーで買った食材を調理して食べることもある。色々とバラエティーだ。
 その四方の道沿いにスーパーもあるし、南側は駅前も含まれるので、買い物などは、そこで済ませる。また西側に大きなショッピングモールがあり、百貨店のように何でもあるので、重宝している。
 郊外の何処にでもあるような町だが、そこに住んでいるだけではなく、かなり広い行動範囲なので、それらを含めると大きな町に住んでいるようなものだ。広いだけだが。
 北へ行くと田畑が多くなり、山が迫ってくる。このコースは季節の移り変わりがよく分かる。田植えや稲刈りなどは毎年見ている。キュウリやナス、トマトなども畑ではよく見るし、白菜やキャベツもよく見る。
 東側に大きい目の公園があり、そのコースを取ったときの拠点となっている。ここは春はサクラ、秋はモミジ。また花を付ける木が結構植わっている。これで花見も紅葉狩りも済んでしまう。
 さて、問題は寒くなってからの夜のコースだ。真冬でも村瀬は出ることにしているが、少し厳しい。だから防寒具に身を固めて南極越冬隊員にでもなったつもりで、出掛ける。
 さらに寒くなってくると、本当に行くのが大層になり、休むことになるのだが、やはり部屋でいるよりも、寒くても外に出たいという気が湧くのか、結果的には出ている。
 部屋でじっとしていることもあるが、出て戻ってから寛いだ方が寛ぎやすいようだ。
 こういう出たり入ったりの散歩ができている間は平穏無事ということだ。
 
   了



posted by 川崎ゆきお at 12:15| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする