2020年01月13日

3630話 名家


 松上領は二つの勢力と接している。囲まれていると言ってもいい。小さな勢力で、簡単に踏み潰せるはずだが、そうはいかない。同盟というのがあり、どちらかが攻めれば、もう一つの勢力が援軍に来るはず。だから、下手に手出しはできないのだが、その後、いろいろと調べていると、この松上領、何処とも同盟関係はない。しかし、いざ攻めてみると、いきなりもう一つの勢力が介入してくるかもしれない。これがあるので、面倒。
 さらに小国とは言え、かなり強い。そして攻め口が一つしかなく、大兵を活かせない。
 だから、まともに攻めても、面倒臭い相手で、相当の被害を出すはず。さらにこの松上領を手にしても、それほど実入りがよくない。
 ただ、すぐ近くに、取れるはずの領地が転がっているのに、取れないというのもしゃく。
 当然吸収することも考えた。松上家を家来にしてしまうことだが、これは承知しない。家格も松上家が上。頭を下げる気はない。取るなら取って見よという感じ。
 これにムカッとし、一気に攻めようとしたのだが、やはり初っぱなから抵抗に遭う。抵抗は松上家だけではなく、家中からも出た。別に松上家と敵対しているわけではないし、松上家が攻めてくるわけでもなし、また松上家の背後に大きな勢力もない。そのままにしておいた方が無難だと言うことだ。そして、松上家の代も変わるはずで、その頃には君臣の礼を取りに来るだろう。さらに、急いでやるようなことではない。
 それで、放置していたのだが、もう一つの勢力が松上攻めを始めた。先を越されたのだ。その勢力と今は戦いたくない。
 そのうち、援軍を送ってくれと、頼みに来るだろうと、高みの見物をしていたのだが、それもない。やがて、攻撃がやんだようで、その勢力は引き上げた。やはり手強いのだ。
 二つの大きな勢力がずっと狙っていた松上領だが、松上家の代が変わった頃、その二つの勢力も消えていた。より大きな勢力が滅ぼしたのだ。そのとき、松上領も攻め滅ぼすはずだったが、その勢力の総大将は礼を尽くして松上家を迎え入れた。総大将が頭を下げたのだ。
 これで松上家はその大勢力の傘下に入った。形だけは家臣となったが、それは形だけの話。
 松上家が由緒ある公家の血筋であったことも大きい。
 戦国期、公家の領地である荘園が、次々に奪われていった。それで地方にある荘園を守るため、そこへ引っ越した公家もいたのだ。松上家はその系譜で、朝廷との縁も深い。
 まあ、名家だったということだろう。
 
   了




posted by 川崎ゆきお at 11:32| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする