2020年05月11日

3747話 尻の穴


 草加は尻の穴が小さいことで知られている。実際にそれを見た人はいないが、親なら知っているだろう。小さかったか大きかったかを。これは親に聞けば分かるが、そういう意味での小ささではない。気持ちが小さい……などと同じで、実際の肝、内臓が小さいわけではない。気が小さいという意味だが、これも気管が細いということでもないだろう。
 肝になると、見ることはできない。開けないと。しかし尻は見ようと思えば見える。外に接しているためだ。そうでないとウンコができないし、屁もこけない。
 草加は気が小さい。尻の穴の小さい男と呼ばれているのは、外からも見えるためだろう。くどいがそのものの話ではない。
 尻の穴が小さいと、神経が細いとはかなり違う。後者は繊細。これは褒め言葉になることもある。
 逆に尻の穴が大きいとはあまり言わない。褒め言葉かどうかは分からない。あの人は尻の穴が大きな人、となると、何か露骨であり、滑稽さが加わる。
 尻の穴が大きいとは言わず、太っ腹とか、胸や心が広いとかになるのだろうか。
 さて、草加の話だが、それなりにいい地位にいる。体格は立派で、押し出しもいい。貫禄がある。しかし尻の穴が小さいと言われている。それに関し、草加は別に何も思っていないようだ。そんな評価があっても、気にしないのなら、これは尻の穴が大きいのではないかとも言える。
 だが、何事につけ、か細いというか、考えが小さい。身体に似合っていないが、体型とは関係はない。
 草加は尻の穴が小さいことを自認している。そちらの方がリスクが少ないため。石橋を叩いて渡るタイプで、高い地位にいるのもその小ささのためかもしれない。無謀なことはしない。何でもかんでも引き受けない。人を大きく包まない。
 だから、大物ではなく小物。だからこそ今の地位にいる。安全弁の役目を果たしているためだろう。
 弁は小さい方が締めやすい。
 尻の穴の小ささを誇る、ということはない。また誇るべきことではない。
 気が小さく、一寸したことでも震える。だから震度計としては優秀。異変に対していち早く反応する。微震でも。
 尻の穴の小さな草加。初対面の人は、その噂を知っているだけに、ついつい想像してしまうようだ。
 
   了




posted by 川崎ゆきお at 12:35| Comment(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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