2020年08月09日

3837話 腹の意見


 桑田は食べ過ぎた。昨夜のおかずが半分残っていたので、朝に食べたのだが、朝はそれほど多く食べないのが桑田の習慣。習慣にはそれなりの理由があり、そうなるところの訳がある。しかし、食べてしまわないと腐る。捨てるのはもったいない。高かったし。
 夕食は腹一杯食べるのが桑田の習慣。習慣にはそれなりの過程からの結果。最初から腹一杯食べていたわけではないが、昼御飯を抜くことがあるので、夕食は一気に食べる。何故昼御飯を抜くのかは、それは生活上の理由で、食欲とは関係しない。しかし、習慣とは恐ろしいもので、昼食の量は少ない。食べる気があまりしないのだ。ただし、好物とか、滅多に食べられないような御馳走なら別だし、仕事先で上等な仕出し弁当が出たなら、たいらげる。これは出してくれた人に悪いので、残すと問題。
 さて、朝だ。食べ過ぎたため、動きが緩慢になった。だから朝はあまり食べないのだ。一日のスタートが緩慢では何ともならない。
 その状態は病気ではない。身体が悪いわけではない。だから当然仕事へ向かう。見た目、普段と何ら変わるところはないのだが、動きが鈍い。これがスポーツ選手なら、その鈍さが目立つが、普通に歩き、普通に手足を動かす程度なら、差は出ない。
 しかし、桑田自身は気怠さを感じている。満腹感で満ちているのだ。食べるために働くとしても、既に食べ終えたので、目的にはならない。それが空腹時なら、ハングリー精神が出る。仕事が終わればいいのを食べたいとか。それほどよくなくても、食べることで満足が得られる。そのために働いているのだから。
 腹をすかしている人達が多いほどトラブルが多い。満腹の人ばかりだとトラブルは少ないだろう。満ちているか、いないかの動物的な問題かもしれない。ライオンもトラも満腹のときは横に美味しいものが来ていても襲わなかったりしそうだ。吸血鬼も血が胃にパンパンのときは襲わないだろう。
 朝からたらふく食べた桑田はやる気をなくした。理性ではなく、胃がそうさせている。胃の意見。腹の意見だ。
 それで仕事場でもだらだらしていたため、効率が悪い。遅い。
 こんなことなら、もったいがらづに、食べないか、または半分ほどにしていた方がよかった。半分でも多すぎるので、三分の一でも。
 それで、昼になっても腹がすかないので、抜いた。
 そのあと調子が戻り、緩慢さは消え、シャキシャキとした動きになった。
 そして夕食。流石に腹がすいたので、沢山食べた。今度は食べ残さなかった。
 
   了
 




posted by 川崎ゆきお at 12:17| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする