2020年10月04日

3892話 エスカレート


 里見はエスカレーターで、いつもの階で降りたが、様子が違う。よく行っている場所なので、何階かは覚えているので、繰り返し繰り返し折れては上へと向かう。その繰返し回数も覚えているし、どんなテナントが上がればあるのか、また横からも見えるので、確認は容易。
 それに何度か踊り場を通過したので、その回数だけでも分かる。四階なので、何度かそれを繰り返すだけ。たまに四階のはずなのに三階だったことがある。逆に行きすぎて五階まで上がったことはない。
 五階に用はないが大型家具店が入っているのは知っている。
 そういった慣れた場所で四階は始終行くので、階数など数えないで、四階で降りた。四階だという認識は三階を通過したとき、三階にあるテナントをちらっと見たため。これほど確実なことはない。もし見なかったとしても、四階だと何となく分かるだろう。
 ところがその四階、様子が違う。改装工事でもしているのだろうか。仕切り板が目立つ。まさか消えてなくなったのか。これはよくある。
 仕切り板は化粧板で、同じ模様の繰り返し。これは花だろう。もし移転したり、閉店してしまったのなら貼り紙程度はあるはず。しかし、そんなものはない。花型の幾何模様の繰り返しで、紙など貼っていない。これは工事中だろう。しかし、里見は昨日も来ている。閉鎖したり、何かあるのなら、分かるはず。
 階を間違えて五階にまで上がったのかと最初思った。家具屋だが、この五階、よく店が変わる。家具屋の前は有料遊技場。子供牧場だ。五階そのままの広さがあるので、結構広い。家具屋も広い方がいいだろう。物が大きいので。
 しかし、階を確認すると、確かに四階だ。これは書いたものだが、固定されている。何とでもなるが、その文字を信じるしかない。窓がないので外は見えない。見えても四階と五階の差など分からないだろう。いつも見ているのなら、見晴らしが少しだけいい程度だが、ないのだから、そのいつももない。
 里見は戻ろうとしたが、下へのエスカレータは少し回り込まないと行けない。どうしても四階内を通らないと。
 しかし、化粧フェンスで塞がれている。幸いエレベーターはエスカレーターで上がったところにある。数歩で、その前まで行ける。
 エレベーターが口を開けているはず。あとはフェンスで塞がれているが、一応降りられる。
 エレベーターの三角ボタンを押すと、すぐに開いた。このビルのエレベーターはなかなか来ないので、エスカレーターしか使っていなかったが、こんなに早いのはおかしい。いつもと違う。
 そして一階を押し、閉めるボタンを押した。
 当然だが、ドアが開き一階に出たのだが、これもまた当然のことのように見たことのない風景が拡がっていた。
 
   了
 


posted by 川崎ゆきお at 11:15| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする