2020年10月18日

3906話 妙なこと


 秋の穏やかな日々が続いているが、北沢は平穏ではない。何か妙なことが起こっているのだが、それがよく分からない。具体性はないが、感じる。
 感じるためには先立つものがいる。それがない。もしかして内部から来ているのではないかと、調べてみたが、確かに不安材料はあるものの、誰でもあるようなこと。また過去の何かから来ているのではないかと、思い出したのだが、これも去ったことなので、忘れていたり、時効になっていたりする。
 もうその不安感の賞味期限は切れている。
 内部からではないとすれば、外部から。しかし全てが内部ではないかと思うこともあるが、それを言い出すとややこしくなる。
 何かが起こっているのは確かだが、それが出来事として起きているのかどうかが分かりにくい。ただ、いつもと違う何かが動いているような気がする。中身は分からない。反応だけがある。それは北沢の反応。何かあるように感じるだけ。ここがかなり頼りない。少しでも、髪の毛一本でもいいので具体的な掴み所がないと、方向性さえ分からない。
 五臓六腑の疲れが出ているのかもしれない。これが夢の原因だという説もあるほど。しかし身体に問題はないはず。調べればどこか悪い箇所があるはずだが、勝手に治っていることも多い。
 平穏ではない不安感のようなもの、宙に浮いたような状態で、足が地に着かない。フワッとしている。まさか死んだわけではあるまい。幽体になってしまったなら、鞄も持てないだろう。
 穏やかではない乱れ。何かがざわついている。そして、それが不快といよりも、不安。その不安で身構える。だから落ち着かない。
 一体何が起こっているのだろう。
 目に見えない何か、正体が何か分からない。これは困ったものだ。
 秋晴れで外は気持ちがいい。もう暑さはない。日陰に入ると涼しいほど。ひんやりする。
 北沢は部屋にいても気が塞ぐばかりだし、息が詰まりそうなので、外に出ていた。近所を一寸散歩する程度。これだけでも気晴らしになる。一瞬、それから解放されるのだが、また出てくる。だが、具体性はない。
 北沢の計器が壊れているのかもしれない。
 過敏に反応するにしても、少しは具体性が欲しい。そうでないと手掛かりがない。どうすればいいのか、手の打ちようがない。
 それから二ヶ月後。
 北沢の調子が戻った。
 何が原因で起こり、何が原因で治ったのかも分からない。
 
   了

   


posted by 川崎ゆきお at 10:44| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする