2020年10月19日

3907話 低調


 高峯は調子が良い。お調子者ではない。久しぶりに体調がいい。久しいのだから、普段は体調が悪いのだろう。それがたまに良いときがある。これは気候による。晴れて気持ちのいい日だと、結構調子が良くなる。しかし雨がしとしと降り続く日も調子が良いときがあるので、一概には言えない。
 いい感じの調子なので、色々と積極的な働きかけがしたくなる。意欲も湧く。
 しかし、調子の良いときほど注意が必要。別に燥いだり、騒いだりするわけではないが。
 前回、調子の良かったとき、色々とやって失敗した。続かないのだ。それは調子が良いときに合わせたもので、調子が落ちると、もうできない。そして高峯の普段は調子が悪い。だからほとんどの日は調子が悪いので、何もできなくなる。
 そして調子が戻ったときにまたやり始めるのだが、もう醒めている。
 やはり調子の良いときにやったことは、ただのオチョウシノリのようなものに近いようで、ろくなことはない。ただ、その調子を維持できていれば、何とかものになったはず。
 普段は調子が悪いのだから、それに合わせたものがいい。今回はその学習ができているので、体調が良く、勢いがあっても無理をしないように、じっとしていた。
 調子の良いときほどじっと静かにしている。これは逆ではないか。
 しかし、ベースが低調なので、それに合わす方がいい。そして年々年とともに勢いも落ちており。低調寄りが好みになってきている。
 それならば、うんと低調なこと、もっと低いことがいいのではないかと考えた。体調が悪いときでもさらに楽にできるもの。これなら長続きするだろう。
 元気なときほど弱々しいことを考える。これもいい。元気の罠にかからないためにも。
 弱々しいが、弱っているわけではない。眠っているわけではない。
 そういうことを考えていたのだが、翌日冷え込んだ。急に気温が下がった。これで高峯の元気も沈み、当然体調にも来て、もう元気さから外れた。
 そのため、より低調なことへのチェンジはできなかった。これは元気なときに余裕でやるもので、低調なときは、現状維持だけで一杯一杯のためだろう。先のことなど考えなくなる。
 また、低調なとき、やけくそで、とんでもないことをしてしまう。それをやることで、刺激を受け、空元気が生まれるため。これも何度かやったので、もうその罠にはかからない。
 寒さで身を縮め、視界も狭く、動きも鈍化。
 別に悪いことではない、と高峯は思った。
 
   了

 


posted by 川崎ゆきお at 12:04| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする