2020年12月17日

3966話 偶然の寓話


 良い偶然と悪い偶然がある。まんが悪いとかもある。
 これは心がけでは何ともならない外との関係。ただ、悪い偶然を減らすことはできる。当然良い偶然も増やせる。まんが悪い場所に行かないとか、危険そうなところには近付かないとか、危ない話には乗らないとか、そういった危機意識というよりも、憶しているだけだが、この臆病さが命拾いになる。ただ、それだけでは良い運と巡り合えるチャンスも減るかもしれない。
 良い巡り合わせや、幸運は危険なところにあったりする。
 人というのは偶然の巡り合わせで一生を終えるのかもしれない。作為的なこともあるが、ただの偶然で決まることもある。
 また全ての偶然は必然というのもあるが、これは言い過ぎだろう。ただ目に見えぬ運命のようなものがあり、最初からシナリオが決まっていたりする説もある。その場合、そのシナリオを意識しだしたときからおかしくなったりする。それもシナリオの内なのかどうかは分からない。シナリオを意識したときから流れが変わる。
「最近起きた偶然の出来事について語って頂けますか」
「寓話ですな」
「何でもかまいません」
「自転車置き場がいつも一杯で、止めるところがないのです。探せばあるのですが、本来の場所ではなく、歩道にはみ出してしまいます。そこに止めちゃいけないことになっていますが、一杯の時は止めている人が多いのです。他に置き場所がありませんからね」
「偶然は?」
「あ、はい。その日、一杯一杯のはずなのに、隙間がポッカリ。しかも余裕のある広さ。キチキチじゃ自転車をこじ入れる必要があるのです。そのときハンドルとかが引っかかって、自分や相手の自転車の何処かをこすりつけたりします。これはまずいですね。それと入れたはいいが自転車の横に立てない。キチキチですから。だから前籠の荷物などは手を伸ばさないと掴めないし、掴めてもその角度からでは重い」
「はい」
「また鍵を掛けるにも、窮屈なので往生します。手元がよく見えない。私の自転車の後輪の鍵、これが上手く閉まらないことがあるんです。コツがいるんです。油を差せば改善しますが、最近忘れていました」
「偶然の話なのですが?」
「いま話しているじゃないですか。そういう状態が多いのに、左右に十分隙間が空いた空間があるのです。これなら自転車の横に立てる。これが偶然なのです」
「ああ、そういう偶然ですか」
「これは滅多にありません。しかし、いつもガラガラの駐輪場なら、偶然もクソもありません。普段から一杯一杯だからこそ、この偶然の隙間が有り難いのです」
「そういう説明は私がします」
「失礼しました」
「それだけですか。最近の偶然は」
「そこに自転車を止めて」
「また自転車の話ですか」
「違います。あとを聞いて下さい」
「はい」
「そこで自転車を止めて喫茶店へ入るのですが、喫煙室がいつも一杯一杯」
「またですか。それで、空いているテーブルが偶然あると嬉しいとか、ですね」
「それは私がこれから語ることです」
「どうぞ、次を」
「もう、あなたが言ってしまったので、話す気がしませんが、その日に限ってガラガラでどの席にでも座れる。この二点。良い偶然でしょ」
「そうですねえ」
「ただの偶然ですが、これも普段の状態があるから、良い偶然だと感じるのでしょうなあ」
「それは私が言うことです」
「失礼しました」
 
   了



posted by 川崎ゆきお at 12:42| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする