2020年12月31日

3979話 年越し

「クリスマスはどうでした」
「いつの間にか来て、いつの間にか去っていました」
「そうですか」
「あなたは」
「同じようなものです」
「そうですか」
「年末はどうですか」
「もう数日で今年も終わりますねえ」
「どんな感じですか」
「さあ、いつの間にか来て、いつの間にか新年でした。明けて新年、元旦。正月三が日もあっと来てあっと去るでしょう。初夢を見る暇がないほど早い」
「そこまで早くはないと思いますが、要するに平日と変わらないと」
「そうです。だから色々とゴチャゴチャある年末年始は調子が狂います。早仕舞いする店、休む店。平日の方が良いです。特別な日よりも」
「以前からそうでしたか」
「いや、子供の頃はクリスマスやお正月が楽しみで、早く来い来いお正月でしたよ。ずっと待ってました」
「お年玉ですか」
「クリスマスプレゼントやお年玉、前者は物で来ますが、後者は現金で来ます。プレゼントは予約できて、これが欲しいと言えばそれが来ます。いずれにしても小遣いができ、色々なものが買えます。つまり正月は玩具買いで忙しかったのです。そういうのを買いに行く行事が正月行事だったのです。神社にも行きますが、輪投げをよくやりました。狙っている人形、買った方が安かったです。でもたまに輪を買い足さなくても一発で入れた物もありますがね。これはミロのビーナスですが、ただのヌード人形。これは恥ずかしくて、家に帰っても飾れませんでしたがね」
「何故裸人形を狙ったのですか」
「どうせ入らないので狙ったわけではありません。それに当てて、手前のものを狙っていたのですが、当てたはずが入った」
「急に元気になりましたねえ」
「行事よりも、そういうことが子供には楽しいのです」
「そうですねえ」
「そういうのはもうできませんので、クリスマスも正月も、面白くありません」
「まあ、無事クリスマスを超え、今度は無事年越しできれば、それだけで十分でしょ。但し無事に」
「それでもクリスマスと正月、少しだけ散財したい気分です」
「そんな小遣いがあるだけでもいいじゃありませんか」
「いや、何か買っても昔ほどの喜びはない。子供の頃のようなあの燥ぎ方がね。もうできない」
「年をとるに従い、そうなるものでしょうねえ」
「そうですねえ」
「ところで、あなたはこれからどちらへ。買い物ですか」
「仕舞い参りに行きます。今ならガラガラなので」
「はあ」
「しかし、それが私の初詣なんです。年に一度しか行きませんからね。それが年越し前になるだけです。今年初なので、これも初詣でしょ」
「渋いことをなされるのですねえ」
「あなたはこれからどちらへ? 買い物ですか」
「いえいえ、師走の町をウロウロするのが年中行事でしてね。特に目的はありません」
「そうですか、じゃ、いい年越しを」
「はい、あなたも」
 
   了


posted by 川崎ゆきお at 12:41| 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする